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王都のチートな裏ギルド嬢  作者: 秋津冴
2.ダンジョンの爆破魔

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17.貴族のルール


 つまり彼の身分もこの総合ギルドの中ではそれなりということで。


「このような場所で今からする会話をしてもよろしいのですか」

「何の問題もない。聞くことも感じ取ることができないぐらいには、まともな結界を張ってやるよ」

「どうしてレム様はいつもそう規格外なのです。シリル様にしてもそう……私なんて魔法学院を首席で卒業できるはずだったのに。みんなずるいですよ」

「命を張って己のランクを上げることを考えなければ首席なんてモナは何の意味もない。俺はそう思うぞ。アレンはどうだ?」


 問われ、いつのまにか杖を手の内から消してしまった監察局の男はちょっと意地悪そうな顔をした。


「僕もそう思いますよ。学校の塀の内側で守られている限りは大した成長できない。実践が大きく役に立つでしょう。そういうわけで、レム様。今回の件ですが」

「それについてはお前の目の前にいるそいつに聞いてくれ」


 そいつと言われ、アレンがそちらを見るといたのは美味しそうに料理を食べ終わった皿に残っているソースを舐めようとするナターシャで。

 朱色の猫は、「こら!」と小さく一つ声をかけ、どうやってかそれをしっぽの先で取り上げていた。


「行儀の悪い事するな。マナーを守れ、この国の中で生きていくならな」

「だって美味しそうですよ?」


 マナーを守れという一言がどうも理解できないらしい。

 ハサイヒメはうーん、残念と悔しそうに取り上げられた皿を見てぼやいていた。


「ここにはここのルールというものがある。それを守るようにしなければお前が生きていく空間はどこにも存在しないぞ」

「はーい。ちぇー分かりましたよー」


 それでは別のお皿を食べることにしますと言い、ナターシャは話しかけようとしたアレンを無視して次の皿を食べ始めてしまう。


「これは困ったね」

「ナターシャ。お前の客だ。お前が相手をするのが礼儀だ」

「はーい。レム様がそう言われるのならば。承りました」


 たぶんエミリアやシリルが言ってもこうはいかないだろう。

 それほどまでにハサイヒメは背筋をシャンと伸ばして、いい子を演じていた。


「それではどこから話をしましょうか。エミリア様の件、ハサイヒメの移住の件、シリル様の件、それに……」


 問われると朱色の猫は白身魚のフライを口元に運びながら、少しの間空間に視線を彷徨わせた。


「優先事項はとりあえず俺の馬鹿な相棒の解放だ。あれが解放されるということはエミリアの罪も許されるということになる」

「ふむ。それはそうですね。あれから監察局の方でもいろいろと調査を進めておりまして、やはり王族があのような場所で婚約破棄などを堂々と行われては困るのですよ」

「それはそうだろうな。この国は法治国家だ、昔のように封建時代には戻りたくないだろ。王族は飾りでいい。貴族どもも、過去の栄光を取り戻したいと思うのだろうが」

「もうすでに時は満ちていますからね。今更時代遅れと言われても仕方がないですよ。そんな古い考え方」


 やれやれと監察局の捜査官は首を振った。

 エミリアはまるで自分に対して嫌味を言われてるような気分になって心が曇ってしまう。

 魔法が使えるから貴族は国民に奉仕しなければならない。


 そんな法律が作られてもうどれくらいになるだろう。

 今では魔法は誰の側にもあって、威力の大小はあれどそれを使うことは誰にでもできるわけで。


 貴族や王族というだけで、こんなに軽んじられなければいけないのか。

 自分たちだって国民や他の国の市民達と同じように人間だというのに。

 納得できるようで納得できない感情に少女の心を揺らしていた。


「ああ、僕も貴族の一人ですから。あなたに対する嫌味ではありませんよ。自分が帰属する社会に対して嫌味を言っているのです」

「そうですか。私も愚かな王族のひとりですから。あとはあなたに協力するだけで、もう何もすることはありませんね」

「協力いただけるのであればそれは助かりますね」

「協力するためにこちらからお食事代を出しているのですから。それは当然ですね」


 何が当然なのか分からないけれど、食事の途中からやってきて今彼が飲んでいるワインの料金も結局は、シリルやエミリアの財布から出ていくことになる。

 この食堂で飲み食いした分の勘定はそういう風に清算される。


 だから、嫌味のひとつでも言ってやりたかった。

 捜査官は自分のワインを見てエミリアを見てこれは失礼。

 それだけ言うとテーブルの上に数枚の銀貨を取り出して置いた。

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