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王都のチートな裏ギルド嬢  作者: 秋津冴
2.ダンジョンの爆破魔

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15.身勝手な上司たち

「発動するからここまで呼んだに決まっているだろう? 何をバカなこと言っているエミリア」

「馬鹿なこと。馬鹿なことを言ってるのですよ」


 しゅんとして肩を落としてしまったエミリアを、ナターシャがよしよしと頭を撫でてやって機嫌を取ろうとする。

 心のどこかでナターシャのことを見下しているエミリアには、それが面白くない。

 触らないでください、と小さく悲鳴のような拒絶をするも、ハサイヒメはそれが面白いのか、きゃははと水色の光の鱗粉をあたりに撒きながら余計にエミリアの真っ黒な髪の毛を撫で回す。 

 自分が皿を平らげてから、満足したのか朱色の猫はそろそろだと辺りを見回した。


「誰かお持ちなのですか?」

「言っただろう監察局に用がる、と」

「あ……それは聞きましたけど。売り飛ばすとか言ってた」

「逃げるなよ。売り飛ばすといってもお前を売ったところで、手に入るのは指名手配犯の賞金程度。金貨数枚など、大して旨味がない」

「は? 誰が金貨数枚ですか」


 お前だよ、とレムは鼻の先をエミリアの顔に近づけてそう言う。


「あの夜からお前、エミリア・センディア。センディア公爵家令嬢エミリアは王族に反逆した謀反人だ。そういう内容で手配書も回っている」

「……私を殺人犯に仕立てた挙句、今度は当局に売ろうと?」

「どうすればそんなたくましい想像力が湧いてくるのか知りたいところだが。お前をかくまってきたのは……いいや、保護してきたのは俺の力でもありあいつの願いでもあるから叶えてやったんだ」


 意味がわかるか? と朱色の猫はエミリアの顔の真ん前にその鼻先を突きつけてきた。

 エミリアの目が思わず寄ってしまう。

 叶えてやったとはどういうことだろう。


 つまるところ、このレムという魔王にも匹敵する魔族はシリルの頼みだから自分を助けていたという。

 そんなことは誰も頼んでいないのに。

 勝手に拾って勝手に助けておいて殺すのも生かすのも自由だなんてそれこそ、あまりにも身勝手ではないか。

 エミリアの瞳にちょっとだけ怒りの炎が灯った。

 黒くてほんの少し鳶色のその瞳を見て、朱色の猫はふふんっと鼻を鳴らす。


「俺のことを身勝手だと?」


 思わず心の中を言い当てられてエミリアはごくりと唾を飲み込むも、

「思います」

 と一言。

 毅然とした態度で自分のことは自分で決めたいと意思表示をする。


「しかし、お前のことを辱めたあの第六王子には何がしかの報復をしないと気が済まない。そうだな?」

「それも……はい」

「さっきもした会話だが二度目の確認だ。そう思うなら何故自分からそうしなかった?」

「それは。だって出て行った瞬間に私なんて殺されてしまう」

「自分の非力さを理解しているなら、それでいい。お前がこれからやることをもう少し簡単に説明しよう。まずナターシャから魔法を受け取れ。これの持つ魔法は、現代のこの王国にはまだ伝わっていないものだ」

「……多分そうですね。そんな便利な魔法、これまで聞いたことありませんから……」

 ふむ、と朱色の猫はエミリアの素直な返事に一つ頷く。

「しかし学ぶためには実験台が必要だろう?」

「だからといって、何もあのお方を的にしなくても良いではないですか」

「そのお方の周りにあるものを壊したところで、もしかしたら自然に起こったかもしれないことだと周囲は思うかもな?」

「え? だって、復讐をしろって」

「お前はバカだな」

「そんなひどい!」

「あのシリルでももう少し賢く立ち回ると思うが? 何のための観察局だ。利用しない手はないだろう」


 再び猫はふんっ、と鼻を鳴らした。

 利用しない手はない?

 それはそうかもしれない。利用できるなら、なるべくこちらが悪い立場にならないように利用したいものだ。

 しかし現実はそう上手くいかない。


 うまくいくなら、今ここに自分がいるはずがないからだ。

 まかり間違ってもエミリアは公爵令嬢。

 王族に連なる家系なのだ。あの夜の失態だとて、父親のセンディア公爵がなにがしかの手を打ってないとも限らない。

 だけど指名手配をされていると聞けば、それは現実を端的に理解させる。

 実家は……没落したのだ、と。

 エミリアは理解する。


 

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