第46話 破局1
「……どうして清暖がここに?」
空き教室に足を踏み入れた青空の第一声はそれだった。
彼女が送る視線の先では抽冬が吹けば簡単に散りそうな脆い笑みを浮かべている。
「ちょっと、ね。もしかして、その状態でここまできたの?」
抽冬は腕を組む俺と青空を見て驚くように言った。
張りつめた空気を少しでも和らげようとしてくれたのか、はたまた単なる皮肉か、どちらかはわからない。確かなのは、前者を望んでしまうのは俺の勝手な都合で、俺の弱い部分ということだけ。
「はぐらかさないで。もう一度聞くけど、どうして清暖がここにいるの?」
「僕がいたらダメなのかな?」
「質問の答えになってない」
「答えなきゃダメかな?」
「茶化さないで」
もはや苛立ちを隠そうともしないその声は、普段の穏和な彼女からは想像がつかないほど冷たいものだった。
「華美」
抽冬に名前を呼ばれたのを俺は合図と受け取り、頷き返す。
「青空、ちょっと窮屈だから離れてくれないか?」
「嫌です」
離さないようにと青空は自分の身体を押しつけてくる。
なにも知らなかった前の俺なら興奮してまともに思考できなかったかもしれないが、今の俺は違う。
「離れてくれ」
「…………」
再度要求すると、青空はすんなり従ってくれた。
無言で後ろに下がり俺から距離をとった青空。その瞳は既に偽ることをやめているようだった。
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