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第37話 晴れのち2

「――ここだ」



 華美が足をとめたのはつい先日訪れた場所、特別教室棟二階の端にある使われていない教室の前だった。



「お先、どうぞ」



 そっと横に逸れて引き戸の前を私に譲る華美。どいうつもりかはわからないけど、まぁ華美のことだし思いつきの行動だろう。


 私は警戒することなく、引き手に指をかけ左にスライドさせた。



「――あ、朝陽さんッ⁉」



 中には現在関わりたくないランキングトップ3に入っている〝お日さま〟が。



「よ、待ってました!」



 朝陽は私に気付くや否や、うざったらしいくらい眩しい笑顔で近づいてきて、私の手を取る。



「どうして朝陽さんがここにッ?」

「細かいことは気にしな~い――ささ、どうぞ中へ」



 どうぞと言ってる割には私の手を引っ張り、半ば強引に招き入れようとする朝陽。



「私からしたら細かいことじゃないんです! 答えてください!」

「気にしなくてもダイジョブダイジョブ! ささ、ここに座って!」



 私の質問を手で払いのけるような態度を崩さない朝陽は、向かい合う形で置かれている二脚の椅子の内、片方に座るよう指示してきた。



「そんな怖い顔しないで……ね? ちょっとだけでいいから、お願い!」



 朝陽は手を合わせて首を傾け、お願いポーズをしてくる。同性の私に効果があるとでも思ってるのだろうか?


 朝陽の存在に驚きはしたものの、思考が乱れるほどの衝撃ではなかった。敵意はないと露骨にアピールしてきてはいるけど、彼女がこの場にいるだけで私に不都合が生じることは容易に想像できる。



「……座ってくれないか?」



 遅れて入ってきた華美が、朝陽がいるこの状況を平然と受け入れているとこからして間違いない。



「……華美さん、これはどういうことですか? どうして朝陽さんがいるんです?」



 もう一方の椅子に腰を下ろした華美に私は訊ねたが、朝陽同様に答えは得られず、



「そのままでいいから聞いてくれ……青空」



 代わりといってはなんだがとでも言うようにシリアスな空気を作り出す華美。



「――あ、すみません華美さん! 電話がかかってきたので少し」



 私は咄嗟に思い浮かんだでまかせを言って、教室から出ていこうとするが、



「――ウチらに気を遣わなくてもいいから、ここで電話を受けて」



 朝陽が笑みを浮かべながら行く手を遮ってきた。



「別に気を遣ってるわけじゃありません。通話内容を聞かれたくないから席を外すんです。だから、そこをどいてくれませんか?」

「ならごめんだけど後でかけ直して、今は華美君の話を聞いてあげてくれない?」

「……言い方悪くなりますが、朝陽さんに指図される謂われはないと思います」

「じゃあここから一旦離れるのは許す。けど、スマホは置いていってね!」

「……失礼ですけど、自分が何を言ってるかわかってますか? 電話を受ける為、席を外そうとする人に対してスマホを置いていけだなんて……新手の嫌がらせですか?」

「何も知らない人から見ればそう映るかもね。けど、ここに〝何も知らない人〟はいないしそれに……青空さんはもうわかってるでしょ?」



 表情はにこやかなままの朝陽だが、声音は挑発的なものだった。


 自分は知っているとでも言いたげな口振りに、やけに〝スマホ〟にこだわっている点、直前の言動やそもそも朝陽がここにいるという事実……確信した――朝陽は私のやり方を知っている。さらに言えば眼前に立ち塞がるこの女こそが、華美に私への疑念を植え付けた第三者だ。


 私の行動に制限をかけ、破局を成立させようって腹積もりでしょうが……それがどうした。



「…………わかりました。後で、かけ直すとします」



 いくら邪魔してこようと、私のやることはかわらない。

ウッ…………ホ。

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