第23話 できる男は辛いよ
翌日の午後一時、身支度を整え終わった俺はリビングのソファーでまったりしながら青空の到着を待っていた。
ダブルデートの場所は鴻巣にある〝ラウンドツー〟とのこと。ボウリングやらカラオケ、果てはマッサージまで、様々なスポーツや娯楽に時間を忘れて楽しめること間違いなしの複合エンターテイメント空間だ。
ダブルデートの体となってるが、目的は抽冬と夕奈の親睦を深めること。そして選ばれたのは〝ラウンドツー〟。察するに抽冬を輝かせるためだろう……俺が手加減することで。
ふ、仕方ないな。抽冬よ、今回はお前に花を持たせてやろう。
土曜の午後ならではの緩いバラエティー番組を観ながら今日の俺の役割を考えていると、机上に置いてあるスマホが振動、送り主は青空で、俺の家の前に着いたらしい。
俺はテレビを消し、電気の消し忘れ等がないかを一通り確認してから家を出た。
「――こんにちは、華美さん」
外には黒のニットに白のワイドパンツ、フラットサンダルと大人びた印象を与えてくる青空が。
「おう。じゃあ行くか」
「…………」
出発しようと足を進めるが、何故かじっとしたままその場から動こうとしない青空。
「どうした?」
俺は首を巡らして青空を見やる。彼女はハンドバッグを持つ手を弄りながら、チラチラと俺に視線を寄越してくる。
「あ、あの……おろしたての服なんですが、その、似合ってますかね?」
ふむふむ、服の感想待ちだったか。
合点がいったと俺は天を仰ぎ見て、青空に向かってサムズアップ。
「この澄み渡った青い空と同じように、美しいぞ、青空」
「…………う、嬉しい、です」
はぁ……非の打ち所がないほど、決まっちまったな。一体俺の罪はどれだけ増えていくのだろうか、教えてくれ、神よ。
――――――――――――。
北鴻巣駅で他の二人と合流となってる為、俺と青空は最寄りの駅、深間駅から向かうことに。
「そういえば、休日に華美さんと一緒するのって、初めてですよね?」
「だな」
並んで歩く青空からの言に俺は短く返す。
「ですよね。けど、今日の主役は清暖と夕凪さんの二人ですが……華美さん、言ってませんでしたが今日の〝私達〟の役割、わかってますよね?」
俺単体でなく〝私達〟と口にした青空に疑問を抱いたが、すぐに解消する。
青空も運動神経良くて歌が上手いのか。お互い、苦労するな。
「ああ。任せておけ」
「ふふ、華美さんはいつも自信満々に返してくれるので安心できます。私もできるだけ頑張りますね」
頑張る? 頑張らないの間違いじゃ…………あ、なるほど! 頑張らないのを頑張るってことだな!
そう解釈した俺は「期待してるぞ」と青空に無難な励ましの言葉を送った。
この時はまだ知らなかった。俺と青空とで、考えにズレが生じていたことに。




