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第2話 罪な男

 自他共に認めるイケメン、ってのは意外と結構いるのかもしれない。俺もその中の一人。小、中、高、親戚の集まりや短期のバイト先でだって「カッコいい」や「イケメン」と言われ続けてきた。もちろん今でも。


 だが不思議なことにこれまでの人生で、一度も告白されたことがなかった。


 多分、いや間違いなく、俺が尊すぎて一歩引かれていたのだろう。じゃないと説明がつかない。


 まぁそれもつい三日前までのことだが……。



「はぁ……なんて罪深い男なんだ俺は……。夕奈もそう思うだろ?」

「…………そうだね」



 学校へ向かう途中、隣を歩く夕奈に何度も声をかけているが、さっきからずっとこんな調子、いや一昨日からずっとこんな調子だ。


 暗めの茶髪、ゆるふわボブ、くりくりした眼と陽気な性格、夕奈は明朗快活の定義のような人間だが、ここ最近はまるで逆、覇気がない。


 ……理由は明白だけど。



「盛大に外して恥ずかしいのはわかるけどさ、いい加減、機嫌直してくれよ。俺に彼女ができた、やっぱり俺は残念系イケメンなんかじゃなかった、それでいいじゃんよ」

「別に機嫌損ねてないし……てか、あたしに構わないでくんない? か、の、じょ! がいるんでしょ?」

「構わないでって、夕奈がいつものように俺の家の前で待ってるからだろ」

「それは……その……い、いきなりかえられるもんじゃないの! 生活リズムはッ!」

「いや生活リズムって――」

「――リズムはリズムなのッ! 心配しなくても明日からは絶対行かないしッ!」

「それ、昨日も聞いたんだけど」



 俺が事実を述べると、夕奈は耳まで赤くし、



「――真琴なんてもう知んないッ!」



 捨て台詞を吐いて先へ行ってしまった。


 ……結局、同じ場所に着くんだけどな。


 ――――――――――――。


 様子がおかしくなったのは夕奈だけじゃなく、他にも二人いる。



「あ! 華美君おはよう!」

「おう、朝陽。おはよう」

「青空さんとはどうなの? 上手くいってる?」

「まぁ、ぼちぼちな」

「そっかそっか! じゃあ、はい! お祝いのゼロコーラ!」

「……あ、うん。これ、昨日も貰ったよ? しかも開けた瞬間、顔面に噴きだしてきたし……水も滴るいい男を暗に伝えたかったのか?」

「そ、そうそう! 今回のも全力でシェイクしといたから!」

「はぁ……俺からの告白を断って後悔してるのは痛いほどわかる、これに関しても俺に相手してもらいたいからだろ?」



 朝陽の頬がピクリと反応する。



「え、えっと、ちょっと何言ってるかわかんない、かな?」

「自分の気持ちに素直になれ、朝陽。その上で俺は断らせてもらうが、決してやり返しとかじゃあない。これもまた、俺自身の素直な気持ち――」

「――と、とりあえずそのゼロコーラで頭冷やした方がいいよ? じゃあね!」



 〝お日さま〟はこんな感じで〝お月さま〟に至っては、



「…………ぇ」

「ん? なんて言った月見山――」

「――死んじゃえええええええぇぇぇッ!」



 このように会話にならない。顔を合わせただけで死ねを連呼、更にポコポコと殴ってくるのだ。しかもまったく痛くない。


 それらをはるかに上回る問題は……自業自得でもあるが、



「は、華美さん。きょ、今日の放課後……空いてますか?」



 彼女……青空の存在だ。


 青空に特別な想いを抱いてるわけじゃない。なのに俺は承諾してしまった。いくらムキになってたとはいえ、イケメンだとはいえ、許されざるべき行為。



「空いてるよ」



 だから今日、いや今日こそは……ちゃんと別れを告げなくては。


     ***


朝陽日向


 華美君はどうしようもなく拗らせちゃってる。わかってるつもりだったけど、それでも酷すぎる。だけど、あの拗らせっぷりを逆に利用すれば矯正のチャンスはある。青空さんには申し訳ないけど…………でもいいよね? だって二人の関係は恋人じゃなく偽物なんだから。


月見山花咲里


 真琴君のばか、いじわる、残念系イケメン……私をこれ以上寂しくさせないでよぉ。そんなに青空って子がいいの? …………ううん、そんなはずない。だって、〝その日の内にできた彼女〟なんだもん。絶対に裏がある…………まさか! 真琴君、騙されてるんじゃ…………。

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