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第13話 華美桜

華美真琴


 スマホのアラームに起こされ、迎えた気だるい月曜日の朝。


 いつも通り部屋に日光を入れ、いつも通り身支度を済ませ、リビングへ。


「おはよう、さくら

「おはよう」



 四人掛けのダイニングテーブル、その一席に腰を下ろして朝食を摂っているのは俺の妹、華美はなみさくらだ。


 桜の対面に俺は座る。目の前にはこんがり焼けたトーストと、湯気立つコーヒーが。



「ありがとな。俺の分まで作ってもらっちゃって」

「別に。ついでだよ、ついで」



 素っ気なく返してきた桜は、トーストを食べながら、もう片方の空いてる手でスマホをいじっている。


 桜は俺の一つ下で高一の代。俺とは別の高校に通っている。


 髪色はダークブラウン、髪型はよっぽど好きなんだろう、今も昔も変わらずサイドテール。そして兄の俺が言うのも果てしなく気持ちが悪いが、顔はかなり可愛い方だ。同じ血が通ってるだけある……親に感謝。


 ちなみに両親は共働きで朝早く、平日は桜と二人でがほとんどだ。



「いただきます」



 感謝を言い、俺もトーストを口元に運ぶ。


 うんうん。この若干焦げてる感じ、最高。



「美味すぎだ、頬がとろけちゃう」

「大袈裟すぎだから」

「いやマジで、この焼き加減は天才としか言いようがない。桜、お前はパン職人になった方がいい」

「本職の人に失礼だからやめとく。ていうかお兄ちゃん、どんだけ舌が安いの」



 スマホから視線を離し、可哀そうなものを見るような目を俺に向けてくる桜。



「安かろうが肥えてようが変わらない。桜の作る料理は美味い」

「絶賛してくれてるとこ申し訳ないんだけど、これ、ただトースターで焼いただけだからね? 誰でもできるよ?」

「だとしてもだ、桜の作る料理は美味い」

「……あっそ」



 溜息交じりに言った桜は、再びスマホに視線を戻す。


 こんな感じだが決して仲が悪いわけじゃない。桜は落ち着いてるというか冷めてるというか、あまり感情を表にださないのだ。



「高校はどうだ? もう慣れたか?」

「う~ん、ぼちぼちかな」

「友達はできたか?」

「ぼちぼちかな」

「おはぎとほぼ同じ食べ物は?」

「ぼたもちかな」



 顔色一つ変えずに淡々と答えた桜は、「ごちそうさま」と鞄を肩に掛け、立ち上がる。



「うち、もう行くから。皿洗っといて」

「おう。行ってらっしゃい」

「行ってきまーす」



 桜が出ていき、リビング内に静けさが訪れる……とはならず、



「お兄ちゃん。外で人が待ってるよ」



 桜が戻ってきた。



「ん? 夕奈か?」

「夕奈ちゃんだったらわざわざ戻ってこないよ」

「え、じゃあ誰?」

「いや知らないけど、なんか物腰低そうな女の人」



 物腰低そうな…………まさかッ!



「もしかして、黒髪セミロングでその、学校案内のパンフレットに載ってそうな模範的なヤツか?」

「あ、そうそうそんな感じ。とにかく、あんまり待たせすぎないようにね。じゃ」



 そう言い残し桜は背を向け出ていった。


 …………ま、間違いない。青空がうちに来てる。

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