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3:福引き抽選会

「じゃあ行こうぜ!」


 先導を始めたセイの後ろをあくびをしながらついていくマリナ。彼女にしてみれば彼のこういう暑苦しいところがまず苦手だった。少し前に面識を持ってから何度かこんな絡みをさせられている。


「いやぁ、マリナのおかげでこの街にも大分慣れてきたよ。しかし見れば見るほど驚くんだよな、魔法。俺の住んでたニッポンのサイタマってとこでも手や口から水や火を出すって人はいたんだけどさ、それは手品って言って種や仕掛けがあるから出来るんだ。ここの街の人はそんなの無しに魔法を使うだろ? もう新鮮で仕方ないんだよな」


 これがマリナの苦手ポイントその二である。この男は自分を”異世界人”だと宣っている……本当に異世界人だったらどうして言葉が通じるんだ、なんて質問をしたりもしたが「通じるものは通じるんだから仕方ない、きっと魔法の力でここに来た時に適応した」なんて言われ、その胡散臭さがマリナに警戒心を抱かせているわけだ。そんな嘘っぱちに騙されるものかとマリナは心に壁を作っている。


「……絶対嘘。そんな世界あるわけない。前に言ってたバイク? だって、どうせ鉄を被せた馬とか」


 マリナがそうやって反論する度にセイは楽しそうに説明を返した。


「違うんだって! 本当にあるんだよ、馬よりも小さな形で、またがってハンドルをひねると自動で動くんだって! ……マリナもいつかあっちの世界に行ける日があれば案内してやるのになぁ」


 どうしても話を信じようとしないマリナだが、探偵として証拠を集めきらない内にはっきりとした否定はしない。ただおばけを見たと言っている人を見るのと同じように全く以て信じていないだけである。そんな話をしているうちにくじ引き会場となる小さな建物が見えてきた。道に面した商店の一角を借りて長机で簡単な会場としており、その後ろに景品が置かれているのが見える。


「あ、もうお米出てるんだ。じゃあ五等のお菓子狙いだな……」


 セイはカウンターの賞一覧の表示を見るとチケットを取り出して「三回分です!」と元気に渡している。出会ってから十数日の間がらではあったが気楽なものだなとマリナは小さなため息をついて見ている。


「マリナ! そっちで一回分まわしてよ、絶対良いの当ててくれよな!」


 二つある『賞のボールが出てくるガラガラ』の片方に立ったセイは既に一回分回しながらマリナにそう言った。見れば参加賞の赤いボールが転がっている


「え~……んー……じゃあ」


 とぼとぼともう片方のガラガラの前に立ったマリナは賞の一覧を見て自分がほしいモノを確認する。……もう誰かに当てられている三等のお米は魅力的だったが、仮に出ても持って帰るのが大変だし、やはり五等のお菓子詰め合わせが一番手軽で良いと考えながらガラガラの取っ手を握る。


 お菓子だったら両手とお腹の中で持ち帰れるからな、なんて思いながらのマリナが力なくガラガラと回すと、ポトンと金色のボールが転がった。


「わ、おめでとうございまーす!!」


 派手な色の服にピンク寄りの赤い髪に染め、その上にキャンペーンのための三角帽子を被るという滑稽な格好をしたスタッフの女性がそれを見てカランカランとハンドベルを勢いよく鳴らした。マリナは呆気にとられて「へっ?」と間の抜けた声でハンドベルの音にビクついて片足を一歩後ろに下げながら仰け反っている。


「え! なになに!? マリナ! 何が当たったんだよ!?」


 ティッシュを二つもらったらしいセイがマリナの手元で転がったボールと賞リストに書かれたボールの色を見比べている。二度、三度、いやまさかと何度も見直す。


「特賞! 大当たり~! こちら『ペアで行く! 豪華寝台列車セプテントリオン号で旧地を巡る旅』ご当選でーす!」


 カンカンカン。スタッフのベルが広い商店街に響いた。

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― 新着の感想 ―
[一言] セイは明るいですね~。全然関係ないですが、私、福引の受付やって、カンカンカンのベル鳴らした経験があります。
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