表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンは世界だ!  作者: トト
85/134

82 新体制

 5層の新しい体制が動き出した。


 今までの開拓村は、完全に後方基地となる。


 食料生産、尖兵の養成、そして休養地としての機能を持つ。

 3層の訓練部隊や移民の応募をしてきた者も、ここを拠点とする。


 責任者はオロンとオド。


 そして、西の森の拠点。


 ここは森の村と名前を変え、尖兵の拠点となる。

 尖兵全員に、拠点維持要員を入れて、150名ほどが詰める。


 責任者は村長だが、最近は層長と呼ばれることが多い。

 6層への階段発見の報にも、王宮がほとんど反応せず、当然ダンジョン卿への陞爵の沙汰もなかったので、自然発生的な称号だ。


 一応、開拓局からは、引き続き村長が5層の責任者である通知は来たけどね。


 で、6層への階段周りに作った新しい拠点。通称「砦」。


 砦と言いつつ、狭いながらも畑を作ったりして、村の機能も持たせている。


 人員は俺たち眷族シモベなど50人弱に、新たにやってきた尖兵。


「よろしくお願いします!」


 俺たちの前にならんだ4人の少年少女。


 ガライやエスタを始めとする尖兵見習い組だ。


「オドも思い切ったねー」


 緊張気味の4人を見て、シャルが言う。呆れているようにも聞こえるが、実際は賞賛の気持ちだろう。

 無茶に思えるが、若い優秀な尖兵見習いを最前線に送り込めば、将来のエースを育てることになる。


 もちろん、この子たちを死なせないのが、大前提なわけだが。


「私たちの責任が重大」


 ノマの言う通りである。


 そして重大な責任は、それだけじゃない。


「説明してもらえますか?」


 満身創痍で、砦まで送り届けてきた3層派遣兵とエウォルを見た。

 彼らが連れてきたのは、3層で出会ったガルテア子爵領のみんなだ。


 3層で最初に見た頃よりは健康そうだが、長旅で疲れている。


「お久しぶりです」


 リーダーのアモスが頭を下げる。


「村はどうしたんだ」


 少し前に残してきたシモベの目で確認した時は、普通に暮らしていた筈だ。もちろん共鳴石も使われなかった。


「それが」


 アモスはちょっと言いにくそうに口ごもる。


「私から説明しよう」


 エウォルがアモスの肩に手を置いて言う。


「端的に言うと、ガルテア子爵が失脚した」


「はい?」


「今1層、というか王宮は大混乱らしくてね。少し前までは、陛下がお気に入りの人間を叙爵して、新貴族という派閥が生まれたんだが、その新貴族と旧来の貴族との間で勢力争いが酷いらしい」


「うへぇ」


 ダンジョン平定を放っておいて、お気楽な事で。


「陛下のお気に入りという事で、新貴族が幅をきかせていたんだが、つい最近王宮の警備上で大きな失敗があったらしくてな」


 おや?


「警備の責任者が新貴族の中心人物だったらしく、旧来の貴族も盛り返してきたらしい」


 おやや?


「ガルテア子爵は、新貴族と旧来の貴族の間を取り持とうとしていたらしいが、その行動が新貴族の中で問題となったらしく、失脚してしまったというわけだ」


 俺たちは顔を見合わせる。


(これは、もしかして?)

(警備上の失敗というのは?)

(アレしかない)


 アレというのは、花園の女性陣を丸ごと(というか、警備兵ごと)脱走させた、アレだ。


(やっぱり騒ぎになったかぁ)

(そりゃなるでしょうよ)


 王族経営の娼館を、王宮のど真ん中から消し去ったようなものだ。

 そりゃ警備の責任は問われるだろう。


(ガルテア子爵には悪いことしたかな)


 話を聞く限り、悪い人ではなさそうだし、今回の失脚も完全にとばっちりにみえる。


「そんな事で失脚だなんて、貴族は大変ですねー」

「まあ当家としては、優秀な執政官が手に入ったんで、丸儲けだがね」


「というと、ガルテア子爵は?」


「元子爵は騎士待遇で、父が雇ったよ」


 おお。なにはともあれ、俺たちの行動の被害が少し減ったのなら、なによりだ。


「でもそれなら、彼らがここに来る必要はないのでは?」


 ノマが尋ねる。


「あそこの村は、他との連絡が悪過ぎる。単独の貴族領ならともかく、そういう制約がなくなったんだから、他の村に移住しないかと誘ったんだ」


「でしたら、お世話になったデレクさんたちのお役に立てれば、と5層を希望しました」


 アモスが恐る恐る言う。


「ご迷惑だったでしょうか」


「とんでもない」


 有り難いけどさ。

 思い切ったね。君たち。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ