79 6層への課題
階段周辺の制圧は、ほぼ終了した。
もちろん魔物を全て駆逐したわけではないが、階段から目視出来る範囲の魔物は、全て討伐した。
次の段階として、ここに恒久的な拠点を作る。
前例からすると、ここが第5層の層都になるはずだ。
何年先になるかは、わからないけどね。
やはり前例からすると、第五ダンジョン卿は村長が任命されるはずだ。
「なに?」
俺の視線に、ノマがコクリと首を傾げる。
「よ!第五ダンジョン卿公女!」
何故かひっぱたかれた。
解せぬ。
そんな無駄話をしながらも、やるべきことはやっていく。
まずは、階段を囲むように壁を築いた。
6層から上がってくるかもしれない、魔物対策だ。
魔王に従っていない、ただの魔物であっても、階段を上ってくるというのは、普通にありえることだ。
頻度が低いといっても、備えは必要である。
さらにその外側に大きく壁を築く。
この二つの壁の間が、拠点の居住空間となる。
現在の俺たちの勢力は50人弱。その全員に、さらに2、30人は生活できる場所は確保したい。
ここは、第5層の防衛拠点であると同時に、第6層への侵攻拠点なのだ。規模は大きい方がいい。
ただ。
「人数が絶望的に少ないわねー」
シャルがため息をついた。
6層は、4層以外と同様に広大な平原の層であった。
最弱の魔物は、グレーコボルド。しかも5層より手強い。
試しに2、3度6層に潜ってみたが充分に戦えるし、魔王の兵と思われる魔物にも出会っていない。だが、広大な土地を最初から平定しなければならない。
加えて5層も上下の階段の位置を特定したとはいえ、完全に平定したとは言いがたい。
なにせ5層にいる人類は、俺たちや3層からの派遣兵を入れても1200人に届かないのだ。
せめて倍、出来れば3倍の人数が欲しい。
「じゃんじゃん召喚します?とりあえず、100人程度は余裕ですよ」
ココアの言葉に考え込む。
イシュルたちやアルファのような態度の人間が、あと100人か。
うん。無理。
それに。
「100人召喚しても、全然足りないからなぁ」
「じゃあ上層から、人を募る?」
シャルの言うのは、常道である。問題も大きいけど。
「高くても、5レベルくらいの人を集める意味ある?」
その問題点をノマが指摘した。
そう。ちょっと戦ってみてわかったが、15レベル程度はなくては、6層では厳しい。
俺たちの中でも、元1層組や獣人たちでは、基準に達していないことになる。
村の尖兵たちも、無理。
まして、上層の人間では、ってことになる。
「人を募った上でレベル上げか」
少し遠回りだが、仕方がない。
「とりあえず村長に相談だな」
読んでいただき、どうもありがとうございます
ここのところ、ちょっと短めの話が続いているので気合いを入れ直す所存です。




