77 侵攻2日目
なんか、サイトが重くて予約掲載ができているか不安です。
階段攻略戦 2日目。
砦に行ってみると、グレーコボルドたちが腹を出して寝ていた。
くつろぎ過ぎだろ、お前ら。
壁の向こう側では、トロルやオーガなどの吼える声がガンガン響く中、いい度胸をしているとは言えるかもしれない。
俺たちが入口から現れると、アルファは飛び起きて、部下の頭を蹴り飛ばして起こしていく。
いいから、いいからと止めても、全てのグレーコボルドを叩き起こして、一斉に平伏した。
やりにくいなぁ、もう。
シモベたちも、グレーコボルドたちの態度に刺激を受けて、俺に傅きたくてウズウズしている。
忠誠心の表し方が、おかしな方向に爆発しそうだ。
シャルが優しい表情で、俺の肩をポンポンと叩く。
「ご主人様、ご指示を」
ノマが無表情に言うが、俺の困惑を絶対に面白がっている。
「みんなのレベルも上がってきたことだし、今日は白兵戦を挑む」
ため息を飲み込んで、作戦を説明し始める。
グレーコボルド以外を3隊に分ける。
それぞれ、砦から出て戦う隊、砦から援護する隊、休憩とし、順番に回っていく。
体力が尽きるか、日没で終了とする。
一隊の人数は16、7人。なので、それをさらに2班に分ける。
俺たちやシモベたちも参加するが、あくまでフォロー役で指揮もしない。
「こんな感じだが、大丈夫かな?」
みんなの表情を見渡すと、特に隊長や班長に指名された人が緊張している。
「目的はレベル上げと、戦いに慣れることだ。死なない程度に頑張ろう」
休憩の隊がマイダンジョンに戻り、援護隊が砦上に陣取る。
「準備はいいかな?」
俺は、最初に白兵戦を行う隊だ。シャルは援護、ノマは休憩の隊にいる。
「行くぞ!」
俺は壁を壊した。
目の前にはトロル。さらにその先にはオーガや血毛牛がいる。
ノームの一人が、オーガたちの立つ場所に《軟泥》をかけ、トロルと分断する。
「どうりゃ!」
ドワーフが勇ましい掛け声とともに、ウォーハンマーでトロルの頭部を狙う。
トロルは右手を上げて、かろうじて防御に成功するが、代償として右肘から先が粉砕される。
さすがにトロルの再生能力は凄まじく、右腕の再生が開始されるが、こちらの攻撃はやまない。
左右から近付いた元衛兵の女性二人が、短槍を突き入れたのだ。
しかもその穂先は、粘性のある液体で濡れている。
毒だ。
瘴気の循環を乱す、魔物にしか効かない毒が塗ってある。
「ガアッ!」
トロルが吼えて暴れるが、それも虚しい。
毒で再生能力を乱され、周囲から絶え間なく攻撃を受ける。
(なんか魔物イジメてるみたい)
ココアが苦笑まじりに言う。
まあ確かにそう見えなくもないが、彼女たちが1対1で戦えば、逆に嬲るように殺されるだろう。
ただ勝つために必要な事をしたら、こうなったと言うだけだ。
地響きを立てて倒れるトロルを確認し、俺は後方で《軟泥》に囚われているオーガのうち、1頭を除き《軟泥》を解除する。
もがいているうちに膝まで泥に埋まった状態で、地面が元に戻ったので、完全に身動きが取れなくなるオーガたち。
《軟泥》を解かれていない1頭だけが、怒りに燃えて、少しずつこちらに向かってくる。
次の標的は、あいつだ。
一方、アルファたちグレーコボルドも戦っている。
彼らの戦い方は、もう少し泥臭い。
いや、有り体に言ってグロい。
多数を持って1頭を狙うのは、同様だ。
自分たちより少し強い魔物を狙う。
今回は、小型のミノタウルスだ。
群れでなく、単独行動なのも都合が良かったのだろう。
包囲して四方八方から、嫌がらせのような攻撃をかける。
いらだったミノタウルスが、正面のアルファを襲おうとした。その瞬間、後ろから飛びかかったグレーコボルドが、首筋に齧りつく。
手を上げて、背中のグレーコボルドを振り払おうとするミノタウルスだが、今度は左右から襲われる。
狙うのは、手足だ。
牙や棍棒で手足を狙われ、耐えきれず倒れ臥すミノタウルス。その機を見逃さず、一斉にグレーコボルドが全員で飛びかかる。
そして始まる食事タイム。
(なんか、わたしたちの方が悪者っぽくありません?)
ココアの台詞に同意せざるを得なかった。