75 フラグと伏線
ココアの警告と同時に、犬又3頭が炎の玉を吐いた。
あまり大きくなく、拳大の炎だ。
一直線に俺たちの方に飛んでくる。
ノマが障壁を張り、俺とシャルが矢を放つ。
俺は1射。シャルは2射。
矢は炎の玉を迎え撃ち、砦の寸前で爆炎を上げた。
衝撃は障壁が全て受け止めてくれる。
周りのみんなが犬又を脅威と受け止めたのだろう。一斉に矢や礫を放つ。
犬又は2撃目を放つ事なく息絶えた。
「フラグってなんだ?」
ココアにさっきの台詞の意味を聞く。
ココアはまるで、遠距離攻撃が出来る魔物が出現する事を予想していたようだったしな。
「簡単に言うと、安全が確認出来たような事を言うと、その逆の事が起こる呪いのようなものです」
「呪い!?」
物騒だな、おい。
「他にも、異性を落とす為に必要な、キッカケの事でもあります」
「共通性がない」
ノマがツッコム。
そんな事を言い合っている間も、みんな矢を放ち続けている。
犬又は最優先目標となった為、視界に入った途端に瞬殺されている。
もう一つの優先目標、魔樹は今のところ視界に入る分は焼き尽くしている。
「前進しよう」
砦の前方を隆起させた。
◇◇
それは、異様な光景だった。
岩の塊が、少しずつこちらに近寄ってくる。
岩の上には10人程の人類が乗っていて、壁に身を隠しながら、矢を放ち魔物を屠っていく。
彼が苦労して5層に植えた、魔樹も片端から燃やされていく。
苦労したと言っても、彼がした事は、今いる階段の近くに植えただけだが。
あとは魔樹自身が力を蓄えながら、ゆっくりと移動したのだ。
ただ、本当に苦労はしている。彼にとっては、6層ですら瘴気が薄すぎる。
まして5層は、魔樹5本が密生している、この階段付近以外は、消滅の危機すらある。
本当に命がけの任務なのだ。
だが、それも終わりだ。
魔樹は次々と焼かれ、もうすぐこの場も戦場になる。
彼自身がここで戦うのも現実的でない。
「撤収だな」
報告することも重要な任務だ。
どうせ今回の任務は、将来の先遣隊の為の準備のようなものだ。
失敗しても痛くはない。
◇◇
やっと階段が見えてきた。
半日以上戦い続けている。
と言っても、矢や魔法を放っては砦を前進させるだけなんだが。
魔力の消費は、半端ないけどね。
たぶん、今の俺の身体の半分は魔力回復薬でできている。
そんな事を思いながら、また魔力回復薬を煽る。
「階段に、なにかいる?」
まだ、遠くに見える階段だが、至近距離に群がる魔物よりも、階段の方に注意が引き付けられる。
まるで、無視できない危険なナニかがいるような感じだ。
突如、そのナニかが消え去る。
「あれ?」
シャルとノマと顔を見合わせる。
「逃げた、のか?」
「さあ」
そもそも、本当に何者かがいたのかどうかも定かではない。
「とりあえず、身近な魔物から処理しますか」
砦の後ろに回り込もうとする、ミノタウルスの頭を矢で射抜きながら、シャルが言った。
読んでいただき、どうもありがとうございます。
ちょっと、メタいサブタイトルになってしまいました。