73 侵攻
「一番弱い魔物でホブゴブリンに、あれはグレーコボルドかな?」
隠蔽や隠密を使用しながら、慎重に階段に近づいてきたが、残り1粁を切ると、魔物の密度が、シャレにならなくなってきた。
しかも、魔物が強い。
一番弱いホブゴブリンでも、オーク並みの強さで、それが何十頭も群れている。
グレーコボルドも、そうだ。ゴブリンの倍近い体格で見分け安いホブゴブリンと違い、鼻先から額にかけて灰色の毛が生えているだけのグレーコボルドだが、強さは段違いだ。
素早さも力も全く別物と言って良い。
草原地帯で、極稀に遭遇する事があるが、グレーコボルドと気がつかないで戦いを挑むと命取りだ。
その2種がもっとも多い魔物だが、他にもオークやトロル、オーガがうじゃうじゃいる。
「あいつらも、上位種だったりするのかな?」
シャルが言うが、俺は首を横に降る。
「わからない。オークなんかの上位種は、5層にはいないからな」
ホブゴブリンのような、分かりやすい上位種なら判別できるんだけどな。
「いると思って戦った方がいい」
「そうだな」
ノマの言葉に頷く。
(さて、作戦通りに行くか)
目の前を10頭のグレーコボルドが通りかかるのを見て、念話で合図を送る。
みんなで一斉に飛びかかる。
匂いも隠蔽していたので、完全な奇襲になった。
グレーコボルドたちは、声を上げる間もなくなぎ倒された。
俺は群れのリーダーを含め、2頭を倒している。
ただ、殺してはいない。
俺はリーダーの脇に腰をおろし、頭を押さえつけた。
「お前たちは、負けたんだ。俺を受け入れろ」
リーダーの目を睨みつける。
コボルドは、群のリーダーを頂点とした格付けがしっかりとした魔物だ。自分を破った強者を受け入れ安いと言える。
(従いました)
ココアの言葉に確認すると、リーダーのステータスが見えるようになっていた。
俺の眷属となったのだ。
シャルやノマとは違って、制限を幾重にもつけていく。
命令には絶対服従、意思は残すが必要なら、俺が直接動かせるようにする。
代わりにと言ってはなんだが、能力を少し底上げしてやる。
「よし。お前はこれからアルファだ。いいな」
押さえていた手を離し、他のグレーコボルドも含めて、治療魔法を使ってやる。
アルファは、地に頭を擦り付けるようにして、恭順の姿勢を示した。
それを見て、群全体が同じ姿勢を取る。
(コボルドは、リーダーを抑えれば楽ですからね)
「よし、じゃあアルファたちは、俺たちの後方を守るんだ」
「ガッ」
アルファが頷くのを確認すると、俺は魔法を発動した。
俺たちとシモベたちを乗せた10米四方ほどの土地が持ち上がる。高さは2米程だ。更に胸壁も作る。
「アルファたちは、この後に隠れて、回り込む奴らを倒せ」
「ガガッ」
突如現れた砦に、魔物が集まってくる。
「よし、じゃあ戦闘開始だ」
俺はそういいながら、一番近くにいたオーガに向けて《炎の矢》を放った。
戦闘が始まる。
思ったよりも、楽な戦いだな。
なにしろ魔物は一直線に即席の砦まで走ってきては、俺たちの矢や魔法の的になる。
射撃時間確保の為に《軟泥》を使っていたりするが、危険を感じることは、ほぼない。
待機させたグレーコボルドたちだが、全く出番がない。
「見える範囲は、全て倒したかな」
「そうね。アルファたちを使って、回収させる?」
辺り一面に散乱する魔物の死体を見て、ノマが提案した。
(回収しましょう!もったいない!)
ココアはそう言うよなー。
瘴気が増えても困るので、アルファたちに回収させて、マイダンジョンに放り込む。
一部の魔物は、アルファたちに与えた。
ちとグロいが魔物は魔物を食べて、瘴気を取り込み成長するのだ。
「よし、じゃ進むか」
ツリーボアの血で作っておいた魔力回復薬を飲み干して、気合いを入れる。
「もうちょっと美味しければ、気合いも入るけどねー」
顔をしかめながら飲み干したシャルが、文句を言う。
無茶を言わないでもらいたい。
読んでいただき、どうもありがとうございます。
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感謝の一言であります。
実生活も忙しい中、もの凄く励みになります。
この勢いで、来週はなんとか週3回更新に戻したいと思います。
たぶん。