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ダンジョンは世界だ!  作者: トト
75/134

72 侵食

 目の前に、西の森の切れ目が見える。


 ほぼ村と反対側。西の森の西側ということになる。


 この先10粁ほど行った場所に、6層への階段が見つかった。


 ただ、同時に気になることもあったので、俺たち3人にシモベ6人の最強戦力で、確認に向かっているところだ。


 森の拠点は手薄になるが、獣人たちがだいぶ育ってきたので、防御に徹すれば問題ないだろう。


 拠点周辺の真木も増えて、強力な魔物はほぼ近寄らないしね。


「既にだいぶ、瘴気が増えている気がします」


 もっとも瘴気に敏感な、ノームのナニーが言った。


「特に土が汚れているようです」


「普通、瘴気は大気から回る筈ですから、土の方が汚れてるのは、珍しいですね」


 ココアが考察する。


「最近、瘴気が除去されて土にだけ残ったのか、あいつのせいでしょうね」


「あの木の魔物かー」

「だろうね」


 シャルとノマが頷きあった。


 鳥のシモベが見つけたのは、階段だけではなかった。

 その周囲で動き回る大量の魔物。そして、その魔物が守っているように見える数十本の木。その木は少しずつ動いているように見え、しかも大量の瘴気を放っていた。


「真木と逆の役割なんでしょうか」


 イシュルの疑問に頷く。


「そうとしか考えられないな。問題なのは」


 俺は言葉を探した。


「その木が、その役割のためにあそこにいるのかどうか、だな」


「どういうことでしょう」

「デレク。まだるっこしい」


 イシュルが尋ね返し、ノマがバッサリと切って捨てた。


「要はあの木の魔物が、自分でやってきたのか、誰かに植えられたのか、ってことでしょ」


 ノマの言葉でも、今一つピンとこなかったのか、イシュルは考えこんでいる。


「みんなも知っている通り、魔物の生息には瘴気が不可欠だ。人類にとっての魔素と一緒だな」


 俺が解説する中、シャルが弓を射た。

 100米程先のオークの頭を射抜く。


 近寄りながら言葉を続けた。


「人類と違うのは、俺たちは魔素が薄くても、とりあえず生きていけるのに対して、魔物は瘴気が薄いと消滅する。特に魔物が強力になればなるほど、必要な瘴気が増える」


「だから上層には、強い魔物がこない」


 シャルの言葉に頷く。

 ダンジョンマスターになって得た基本的な知識だ。


「弱い魔物が撒き散らす瘴気が溜まってからじゃないないと、強い魔物は現れない。だが」


 階段があるはずの方向を見る。


「あの木の魔物が撒き散らす瘴気は、異常に多かった。あの調子で瘴気が撒かれれば、もっと強い魔物も、すぐに5層で活動できるだろう」


 仲間たちを見回す。

 全員が真剣な表情だ。


「どうやってあの木の魔物は、階段周囲に群生している?自ら6層から登ってきたのか?それとも、誰かが連れてきたのか?」


「もともと5層にいたのかな?」


 シャルが言う。

 自分でも、これっぽっちもそんな事を考えていない、議論を進めるための言葉だ。


「だったら5層は、もっと瘴気が満ちた魔物の天国だったろうな」


「じゃあ、自分たちで歩いてきた」


 面白くなさそうにノマが言う。


「もっと早く動ける可能性もあるけど、今確認できる木の魔物の速度は、1日1米程度だ」


「では」


 驚いた表情でイシュルが俺を見た。

 彼も気がついたらしい。この驚くべき結論に。


「たぶん、別の魔物が運んだんだ。自分たちの勢力を広げるためにね」

読んでいただき、どうもありがとうございます。


今週が実生活がちょっと忙しいため、水曜の更新はお休みし、次回は金曜日に更新いたします。

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