7 愚行
辺りを見回してみれば、コボルドの死体が6つ。あ、それにガースまで倒れてる。
頭を半分潰されている。ありゃ、即死だな。
「俺の判断ミスだな。ここまで危険な目に遭うとは思ってみなかった。ごめん」
素直に頭を下げる。
「全くです。確かに、私たちもここまでガースが馬鹿だと思っていなかったので、仕方ないと言えば仕方ないですが」
自分とシャルの汚れを〈洗浄〉で綺麗にすると、ノマは半分吐き捨てるように言う。
あれ、もしかしてすると物凄く怒っていらっしゃる?
「本当に。一応仲間だと思っていたのに」
「え?一体なにがあったの?」
「魔物が狩れないくらいなら、良かったんだけどね。見つからないから、森に入ろうって言い出したのよ」
シャルの言葉に、思わず首を振ってしまう。
森は確かに魔物が増えるが、レベルも上がる。踏み込むなら、あらかじめ入念な準備をするべきだ。ノリで入る場所ではない。
「もちろん、わたし達は反対したんだけどね。半ば強引にここまでやってきて、丘の影に入ったと思ったら」
「襲ってきたんです」
ノマが嫌悪感も露わに言う。
「は?!」
「ノマを羽交い締めにしてナイフを突きつけてね。武器を捨てて、服を脱げですって」
シャルの表情は半笑いなんだけど、凄く怖いんですが。ノマは怒りを押し殺そうとして、殺しきれてないし。
2人とも顔立ちが整っているんで、余計に怖い。
「大丈夫だったの?」
なにがとは、あえて言わない。
「運良く、このコボルド達に襲われましたから、大丈夫でした」
あー。意味は判るが、いろいろと内容がおかしい。
「コボルドに襲われるや、戦いもせずに私を突き飛ばして、逃げ出したからね、ガース」
「なにやってんだよ、ガース」
見事なクズっぷりだ。考えなしだとは思っていたが、そこまで腐った奴だとは知らなかった。
「本当にごめん。最初にキチンと断るべきだった」
自分の有用性をアピールしようとして、仲間を危機に陥れてしまった。
「私達もこんな風になるとは思ってもみなかったので、しょうがありません」
「そそ、嫌な顔したのだって、鬱陶しかったからだし」
2人は表情を和らげ、許してくれた。
それから、後片付けだ。
森の近くで、あまり長居する訳にもいかない。
コボルドから、命石と討伐証明の耳を解消する。
残りは、どうするかな。
「シャル、ノマ」
「なに?」
「これからする事については、村に戻ってからゆっくり説明する。だから、とりあえず質問しないで、他の人にも秘密にしといてもらえるかな?」
「なんのこと?」
要領を得ない2人の前で、マイダンジョンへの入口を開ける。
「こういうこと」
そう言って、コボルドの死体をポイポイと放り込む。
コボルドの死体が、中空に消えていくようにしか見えない光景に、2人は絶句した。
「ということを秘密にしておきたいんだ」
「あとでちゃんと説明して下さいね」
呆れたような声色でノマが言うと、シャルも大きく何度も頷いた。
お読み下さってありがとうございます。
少しでも面白いと思ってもらえると、嬉しいんですが。
次回は、だいぶテイストが変わります。