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ダンジョンは世界だ!  作者: トト
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66 脱出

 翌日、王宮を発つ前に、もう一度王と謁見する事になった。

 一応、名目は暇乞いだったが、少なくとも王の目的は違うようだ。


「どうであった?我が花園は?そちらの女性にとっても良い場所であろう?」


 小姓を通じてであるが、身を乗り出すようにして尋ねてくる。


「そうですな。思ったよりはいい環境のようです。現役の戦士はともかく、引退した戦士の隠居先にはいいかもしれません」


 イシュルが答える。

 もちろん内容はでまかせだ。


「引退した戦士、か?」


 あからさまにガッカリする国王。


「レベル30を越えれば後進に道を譲るため、若かろうと引退するのが我等の慣習。彼女たちの第二の人生を歩む場所としては、選択肢には入るかと」


「レ、レレ、レベル30?」


 王の言葉もなく小姓が奇声を上げ、居並ぶ諸官諸侯もざわめいた。


 まあレベル30の人間が五人もいれば、王国とガチで戦争できるだろうしね。


 我々のレベルでも、まだ誰もそこまで行ってない。ダンジョンマスターや、その眷属の種族補正で、それ以上の実力があるとは思うけど、比べる対象がいないのだよな。


「まあ、今すぐ花園に受け入れられるわけでもないので、いずれ考えておいてくれれば良いかな。もしも、受け入れることができる時は、余から声をかけよう」


 いきなりのトーンダウンに、頭を下げたまま笑いをこらえる。


 謁見は終了し、俺たちは帰途へとついた。


 2層を抜けるまでは、懐かしの護送馬車だ。


「いやもう、愛着が出てきたね。この馬車」


 ガタゴトと揺れる馬車の中でくつろぎながら、シャルがいう。


「結局、今回の旅で一番長く過ごしてる」


 ノマが頷いた。

 ちょいちょいマイダンジョンへ行っているが、それを差し引いても、彼女に言う通りだ。


「しかも、今回は隠れ蓑になってくれるしな」


 俺は、イシュルの視界と馬車の上に陣取っているネズミのシモベの視界を確認しながら言う。


 今日は、花園の女性たちを救出に行く予定の日だ。


 すでにイシュルたちはマイダンジョンに待機している。


 救出方法は簡単。


 約束の時間になったら、ノエルの確保してある入り口を使ってマイダンジョンに招き入れるだけだ。


 ノマとシャルは、王宮に残してきたネズミのシモベの耳目を使って、花園の周囲を確認しているが、異常はない。


 花園の女性たちも、女性兵士たちも集合済みだ。


 ノエルが入り口を開き、花園へと足を踏み入れた。


「全員揃ってますね」


 ノエルが声をかけると、女性たちは一斉にビクリと飛び上がる。


「い、一体どこから?」


 そう声が上がる中、イシュルとドランが虚空から現れるのを見て、口をポカンと開ける。


「この向こうに、君たちの新しい世界がある」


 ノエルが薄いモヤのように見える入り口を指し示した。


「準備はいいかな?」


 入り口に近い女性から、意を決したように入っていく。

 そこからイシュルたちが出てきたのを見たせいか、さほど抵抗感はないようだ。


「荷物は少ないんじゃな」


 待っている女性たちの列受け入れる見ながら、ドランが呟いた。


 女性兵士たちが剣と盾を持っている他は、花園の女性はちょっとした小物を持っている程度だ。


 ドランの目の前のドワーフは、小さな人形と男物らしい上着を持っている。


「ここで与えられた物なんて、持って行きたくないので」


 ドランのつぶやきが聞こえたらしいドワーフが、吐き捨てるように言った。


「なるほどな」


 そう言いつつ、見つめるドランの視線にドワーフの女性も自分の荷物に目を落とす。


「これは、夫と息子の形見です」

「ああ、それは」


 ドランは右の拳を胸に押し当てて、首を垂れる。


「不躾な事を。お詫びする」


「いえ。過ぎたことですから」


 ドワーフの女性が、ゆっくりと首を振る。


「行きましょう。わたしたちが、最後のようですから」

「そうですな」


 そして、花園から人影が消えた。

読んでいただき、どうもありがとうございます。


一応今回で、軽い胸糞回は終了です。

残念ながら、ざまぁ的な話は相当先になります。

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