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ダンジョンは世界だ!  作者: トト
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63 フェイントと嘘

 間違いない。


 昔はいざ知らず、今のエルマーは対人特化の兵なのだ。


 考えてみると、今のところ狙われているのは、人の急所のみだ。具体的には喉元、手首、脇の下の3箇所。

 急所の中でも、防具で守りにくいところばかりだ。


 そういう意味では、エルマーは兵ですらないのかもしれない。


 魔物相手は別として、人類相手の戦いでは、兵士は敵を殺すことを目的としない。


 敵兵を無力化することを目的とするのだ。


 これは似ているようで、大きく違う。


 そしてエルマーの戦いは、敵を殺す為のものだ。


「いいね。これだけ戦えるのは、久しぶりだよ」


 エルマーが笑顔に見える表情で言う。


 俺の中で、嫌な感じが膨れ上がる。


 あまりエルマーに手の内を見せない方がいいのではないか。


 例え実力を低く見せても、戦い方やクセは変わらないはずだ。

 俺の情報を与え過ぎると彼と、いや彼の主と敵対した時に、チャンスを与える事になりかねない。


 俺は戦い方を切り替えた。


「ほう」


 エルマーが目を細めた。


 俺が自分の両肘から先に、隠蔽をかけたのだ。


 エルマー同様、集中しないと認識しづらくなる。

 違うのは、動きが激しい部分だけにかけたので、戦いの最中に集中しづらいということだ。


 俺は右手を振りかぶる。


 エルマーは防御に動きながら、右手の軌跡を確認するため集中する。


「ちっ!」


 俺が右手に何も持っていない事に気がついた。

 左手に集中し直す。


 俺は右拳(・・)を振り抜いた。


 拳は見事にエルマーの顔面を捕らえた。


 そのままエルマーが崩れ落ちる。


「俺の勝ちっていう事でいいですかね」


 倒れたエルマーに手を差し出しながら言う。


「ああ、負けだ、負け。完敗だよ。一応、王宮兵最強なんだけどな」


 立ち上がったエルマーが言った。


「これでも俺だって村の尖兵でトップクラスですから」


「さすがに現役は違うって事か」


 エルマーは殴られた顎をさする。


「面白い戦法だったよ。ただ何度も使える技じゃないな」


「そうでもないですよ。ある程度頭がいい魔物にしか使えないけど、使えばほぼ狩れますから」


 嘘です。初めて使いました。


「そうか、少数の魔物と戦う尖兵だからな。俺たちとは前提が違うか」


 そう言って苦く笑うエルマーの表情は、本物の感情に思えた。

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