60 闇
今回の旅の表の目的。
イシュルたちの存在を公表して、王国外部の協力勢力として認めさせる、というのは国王の女好きによって、見事にうやむやになった。
俺たちとしては、イシュルたちの存在さえ認知されれば、うやむやでも全く構わないので問題はない。
王国としても、国外の人類という存在を認めたくないが、押さえつけることも難しいのだから、うやむやになるのは望むところだろう。
そう考えると、実は国王の態度は計算尽くなのか?
女性を後宮に入れろというのも、要は臣従の要求だしなぁ。
与えられた部屋に戻って、ノマとシャル相手にそんな事を言う。
「考えすぎ」
「さっきお女中に聞いたけど、国王の好きなものは名花と小鳥だそうよ」
名花は女性のことだろうけど、小鳥ってなんだ?
「小鳥はそのまんま。ものすごい鳥好きらしいわよ」
そういえば、女官が鳥籠持ってたな。
「大事にしていた鳥を殺されて、猫は大嫌いだって」
「よくそんなに聞き出せたな」
感心する。
一切役に立たない情報だけど。いや、曲がりなりにも一国の支配者の好みだから、いつか役に立つのか?
「エルフたちの情報も聞いた」
ノマは顔をしかめた。
「今の国王の即位前までは、3種族とも男性がいたらしい」
「即位前までは?」
嫌な予感しかしないんですが。
「即位して1ヶ月後には、男性は消えたらしい。子供も含めて」
「まあ、もともと少なかったらしいけどねー」
うわぁ。なにがのんびりと暮らすだよ。ダークすぎるだろう。
「その事をイシュルたちには?」
(今、伝えました)
「反応は?」
(特になにも。マスターたちと、マイダンジョン以外にはあまり興味がないですからね)
ココアの言葉に、少し唸る。
シモベたちの、他者への無関心振りは少し気がかりだ。今はまだいいけど、マイダンジョンの住人が増えてくると、どうなることやら。
「子供には優しくしているようだがなぁ」
「会ってもいない子供には、同情も湧きにくいんでしょ」
「まあ、そうかもしれないけど」
今回の作戦で同胞が増えたら、少し改まってくれればいいんだけど。
読んでいただき、どうもありがとうございます。
なかなかペースが上がりません。申し訳ありません。
なんとか毎回1000字くらいは投稿したいんですが…。
努力あるのみでございます。