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ダンジョンは世界だ!  作者: トト
62/134

59 色ボケ

「そこの女2人。名を申せ」


 一回目。


「直答差し許す。陛下は名を申せとの仰せだ」


「ここにおります、デレクが妻。ノマと申します。5層で尖兵をしております」

「同じくデレクが妻。シャルです。尖兵をしております」


 既婚である事を宣言してみるが、国王はあまり意に介さない様だ。

 庶民の婚姻なんて言ったもの勝ちだし、王侯貴族にとっては、なにそれといった感じだろうしなぁ。


「うら若く美しい女性が、尖兵などとはあまりにも惜しい。美しい女性は愛でてこそではないか」


「恐れながら、我らはオークをも刺す棘を持っておりますれば、1層に飾るのにはふさわしくないかと」


 ノマが頭を下げながら言う。


 国王への反論に、周囲がざわつくが、国王自身は身を乗り出した。


「なに、その方ら女性の身でありながらオークを屠るというのか!面白い。その実力を見てみたい」


 あー、そうなりますか。


 かくして我々は3層連続で、その支配者に実力を示すことになった。




 呆気なかった。


 2、3層での試合に勝る呆気なさだった。


 魔法抜きで瞬殺である。


 まあ無理もない。こちらがシャルとノマの2人に対して、王宮兵側も2人だったのだ。

 王宮兵側のプライドが邪魔して、人数を増やすせなかった。


 エルマーは、せめて倍の人数をと主張していた様だが、上役らしき将軍に一喝されていた。


 今、その将軍は顔が真っ赤だ。


 シャルもノマも、空気を読んで武器を使って試合をしたが、素手でやってたら、将軍は泡吹いて倒れたかもしれない。


「いや!見事である!」


 手放しで喜んでいるのは国王だ。


 召し上げたいな、などとほざ...おっしゃっていた。

 女官と大臣らしき男が、なんとか押し留めようとしている。


 側仕えをさせて暴れた場合に玉体を守る術がない、との大臣の言葉に不承不承頷いたようだ。


 大臣、エライ!


 シャルとノマをほぼ魔物扱いしてるがな。


 いや、あながち間違いじゃないが。


「ところで、亜人の諸君の村には女性がいるのかな?」


 やっと国王の興味がイシュルたちに向いたようだ。女性に関する興味だが。


「それは、いるが」


「実はな、余の宮にも亜人の名花たちがおってな」


「話しには聞いている」


「おおそうか。それは話が早い。どうであろう。そちらの女性で、余の花園に加わりたいものはおらんかな?」


「はあ?」


 なにいってやがる、この色ボケが。

 念話なしで、イシュルの飲み込んだ台詞が感じ取れる。


「我が国と友誼を結ぶ証として、どうだろう」


「うちの女性たちも、重要な戦力だ。くすぶって暮らしたがる者がいるとは思え、ませんな」


 取ってつけた様な丁寧語でイシュルが断った。


「そう言わずに、聞くだけ聞いて見てくれ。そうだ。ものは試しだ。のちほど余の花園を覗いてみるがよい。余の名花たちが、いかに幸せに暮らしているかわかれば、余の花園に加わる女性を説得しやすかろう」


 すげえな、小姓。この長い台詞を間違えなく俺たちに伝えやがった。


 だが、その偉業も内容の馬鹿らしさに霞んでしまう。


 なんだろうね。この、自分に都合のいい考え方は。

 この思考の持ち主が、人族の頂点だということが恐ろしい。


 ただまあ、今回は俺たちの目的に合致するので、それに乗っかるけど。


「とりあえずは、見させていただこう」


 気乗りしない様子を前面に出して、イシュルが言った。


 今回の1層への旅の最大の目的。

 それは、ここに囚われているというエルフ、ドワーフ、ノームの奪取である。

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