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ダンジョンは世界だ!  作者: トト
61/134

58 謁見

「それにしても、エルマーさんが1層で偉くなってるとは思わなかったなー」


 3人3様でだらしなくくつろいでいると、シャルがそんな事を言った。


 胸元が無防備で、大変に喜ばしい。


「一時期、村で最強と言われてた人だしな」

「だいぶ感じ、変わった」


 俺のベッドで寝転がってノマが言う。

 胸元の無防備具合はノマの方が3段階ぐらい上だ。だが、ノマの場合、豊かさも無防備なので、見てるとなんかいけない気分になる。


「確かに。前は陽気な人って感じだったけど、今は良くも悪くも油断ならない感じだな」


「村で戦ってるのと、王宮で偉くなるのは、全く違うって事でしょうねー」

「村の方が、気楽でいいな」

「命のやり取りがあっても、数段気楽」

「今回の旅で、本当にそう思う」


 そんな事を言い合いながら、エルマーはなぜ5層の生活を捨て、1層へやってきたのか、と考えた。

 まあ、他人事であるのだが。


 翌朝。

 用意されていた謁見用の服に着替えて、謁見の間に案内された。

 イシュル達でなく、俺たちも国王にまみえる栄に浴するらしい。


 やたらと痩せた老人に、謁見の際の作法を教わる。


 簡単に言うと、国王がいる間は立つな、顔を上げるな、喋るな。と言う事だ。国王が、2度促せば解禁。


 えらい人の考える事は、よくわからんな。迅速、簡潔、確認がモットーのオドに感想を聞いてみたい。


 それでも、ちゃんとやり方を教えてくれるというのは、2層と比べると好感は持てる。


 偉くなるにつれ、酷さが増していったらどうしようかと思っていた。


 痩せた老人に連れられて、謁見の間に入場する。


 さすがに広い。

 やはり広いと思っていて、実際試合まで行った2層の謁見の間と比べても倍はありそうだ。


 そこに兵と諸官諸侯が並んでいる。兵はともかく、諸官諸侯は20名ほどだ。


 正面の玉座は無人。

 王座右手に、巨大で豪華な両開きの扉がある。


 その傍に立つ男が、声を張り上げた。


「国王陛下、ご入来!」


 全員が一斉に片膝を付き、頭を垂れた。


 例外は王宮兵のみ。

 さっき老人に聞いた話しでは、任務中の王宮兵のみは、国王の前で頭を下げる事を免除されるという。


 まあ護衛対象から、長時間視線を外してたら仕事になんないしな。


 イシュルたちも頭を下げているが、だいぶ浅目だ。


 俺?忠良な臣民としては、深々と頭を下げてますが?


 玉座横の大扉が開いて国王が入ってきた。


 30歳ほどの神経質そうな男性だ。痩せてはいるが、締まっては見えない。着てる服が豪奢すぎて、体形がわかりにくいせいもあるだろうが。


 続くのは、3人の若い女官。さすがに美しいが、後ろ2人が何故か鳥籠を一つづつ持っている。


 さらに小姓と思われる男性が2人に、大臣と思われる2人の壮年男性が続いた。


 頭を下げているのに、なぜそこまで見えているかというと、すでにシモベのネズミが潜入済みだからである。


「国王陛下、ご着座」


 いや、それは叫ぶ必要はなくね?と思ったが、それを合図に諸官諸侯は立ち上がるらしい。


「一同、面を上げよ」


 国王が囁き、小姓が呼ばわった。

 まだ、1回目。


「陛下は、面を上げよと仰せである!」


 2回目。やっと頭を上げた。

 いや、面倒くさい。


「ほう。美しい女性がおるな。しかも2人も」


 普通なら聞こえない国王の言葉を、シモベのネズミがとらえた。


 最初に食いつくのが、そこかよと思わずにいられない。


「名を聞いてみよ」


(厄介事のヨカーン)


 楽しげに言うなよ、ココア。

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