57 古い仲間
両親が死んだのは、今から8年程前だ。今、攻略の最前線である西の森に最初に足を踏み入れたのが両親を含むパーティだったらしい。
そして、いきなりモノタウロスと遭遇した。一つ目で炎を操る巨人だ。
6人のパーティは、1撃で前衛2人を殺されたという。生き残ったのは、
「俺とオドだけだった。お前の両親は殿を買って出てくれた。オドが、右足をやられたんでな。見事な撹乱で時間を稼いでくれたが…」
エルマーは、首を横に振った。
「両親の最期の事はオドさんからも聞いてました。そうか、オドさんを助けたのは、エルマーさんだったんですね」
「助けたわけじゃない。一緒に逃げただけだ。俺は無傷だったのにな」
苦い表情で呟いた。
が、それを振り払うように笑顔を作る。
「ではご案内しよう。陛下は、明日10時にご謁見いただける。それまでは、ゆっくりと休んで旅の疲れを癒してください」
おお、2層と比べると、凄く丁寧な対応だ。
そう思ったのは、俺だけじゃないようでオロンやエスタも含めて、5層組が2層の兵をチラリと見る。
エスターはその視線を誤解したようだ。
「2層のみなさんも部屋を用意してあります。帰りも送っていくと聞いてますので」
通された部屋は、2階の一画で充分な広さの個室だった。驚いた事に、各部屋に風呂まである。
命石を使った魔道具でお湯を張るのだ。
俺たちが魔物を倒して得た命石がこういうところに使われているのを見るのは、ちょっと複雑な気分だ。
いつの間にか俺に割り当てられたはずの部屋でくつろいでいる、シャルとノマの意見は違うようだ。
「お風呂は重要」
「ですねー」
そう言いあいながら、浴槽にお湯が溜まるのを待っているの。
「ここで入る気かよ」
「それこそ命石の節約よ」
「3人で入れば時間も節約出来る」
いや絶対に余計な時間がかかるだろ。お風呂以外のことで。
「デレクに理性があれば大丈夫」
「わたし達は適度なスキンシップで十分だし?」
ウソだ。
2人の適度なスキンシップは、俺が疲れはてる事を意味する。
こら。イソイソと服を脱ぎ始めるんじゃない。
他の部屋に聞こえたりしたら、どうする。
「大丈夫。〈遮音〉をかけた」
「ドアもロックしたし、監視されてないことも、確認したしねー」
結局、3人で狭い風呂に入り、なんやかんやあって、もう一度風呂に入る事になった。
読んでいただきありがとうございます。
いつにも増して短くなってしまいました、なんとかGWで取り戻したいと思っています。
しばらくはお許しください。