55 新たな仲間
いよいよ第1層だ。
王国の都プリモールがある層になる。
2、3層と比べても広く豊かだという。
今、シモベの目を通して見ている景色もそれを裏付ける。
ちなみに見ているシモベは鳥ではない。
鳥だと城内に入れないので、ネズミを改めて召喚した。見ているのは、馬車の屋根にのっかったネズミの視界だ。
鳥は第5層で活躍してもらうことにした。
というのも獣人たちが、第5層の探索に協力してもらうことになったからだ。
「俺は、パルモという。改めて礼をいう。どうもありがとうよ」
馬車からマイダンジョンに移動すると、待ち構えていたらしい熊人の男性が頭を下げた。
作法や敬語としちゃあ、なっていないんだろうが誠意は伝わるので気にしない。
俺も、5層の庶民だしね。
獣人の、しかも男性の顔をマジマジと近くで見るのは、初めてだな。
精悍な顔つきの男性の頭に、クマの耳が付いていて、妙に可愛い。顎の下あたりから黒く艶やかな毛皮が見えていて、肩のあたりまで覆っているようだ。
うん。触ってみたい。
隣に立っている熊人の女性の毛皮も、すごく柔らかそうだ。
シャルとノマの気持ちも、ほぼ同じらしく、彼らの耳の辺りをジッと見つめている。
ガマンガマン。
「我々を手伝ってもらえると聞いたけど」
互いの自己紹介を終え、早速切り出した。
「ああ、あのクソみたいな城から救ってくれた恩もあるしな。ただ、2つ程条件をつけさせてくれ」
「どんな?」
「あっちのダンジョンの、特に2層で獣人を見つけたら、救い出してえ」
「そりゃ問題はないな。出来るだけ穏やかな手段で願いたいが」
「救い出せるのなら、乱暴な手段を取るつもりはねえ」
パルモは頷いた。
「もう一つ。いつか力をつけたら、俺は侯爵の野郎をヤるつもりだ」
「まあ気持ちはわかる」
だいぶ同胞を殺されたみたいだしね。
「俺たちも止めるつもりはないが、時期は相談してくれると嬉しいかな。2層が混乱するのは、困る」
「ふん」
パルモが鼻を鳴らし、シモベたちがピクリと動いた。
「あ、わりいわりい。なんせ育ちが悪いんでな。デレク様には感謝してるし、異論があるわけでもねえんだ」
パルモが頭をかく。
「侯爵をヤるときは、デレク様の許可を取る。それでいいか」
「ああ、それでこちらも条件を飲む。よろしくな」
ここで握手をしたいところだが、それはココアとノマに止められている。
握手は対等な関係になるから、駄目だそうだ。
獣人たちが一斉に片膝をついた。
「よろしく頼まぁ」
態度はともかく、言葉はダメダメだな。