51 舞台裏
2019年4月6日:獣人たちの口調を訂正しました。
獣人たちが謁見の間に現れた時に、これから行われるであろう事を予測し、俺は行動を開始した。
マイダンジョンに戻り、シモベ女性陣を招集する。
その間にイシュルの視界では、犬獣人の少女が苦しんでいる姿が見えた。
「ココア。アレ、外せるか?」
(使われている魔法陣は想像がつきます。大丈夫です)
「よし」
必要な指示を念話等で飛ばして、その時を待つ。
予測通り、2層の連中は獣人たちとイシュルたちを噛み合わせる気だ。敵対勢力を利用し、正体不明の勢力の実力を計るってわけだ。
ならば、俺たちもその流れを利用させてもらおう。
イシュルの〈閃光〉が炸裂した。それと同時にノエルが、マイダンジョンへの入口を作る。
獣人たちの真後ろに、だ。
すかさず、俺はその入口から2層へと飛び出し、目が眩んで立ち尽くしている獣人たちを入口に押し込む。
少し時間がかかりそうなので、追加で〈閃光〉を放つ。これでしばらく視力は回復しないだろう。
残りの獣人たちを入口に押し込んだ。
「え?」
熊獣人の女性が悲鳴混じりの声を上げた。
俺の手が、微妙なところに触れたようだ。
もちろん事故である。
(ほほう)
ココアが意味ありげに言う。
一瞬堪能したのが、バレているらしい。
俺はマイダンジョンに退避する寸前に威力を抑えた〈業火〉を床に放った。
床の表面のみを溶かす程度。
この加減と、ノエルがやった入口の作成。この二つが今回、難易度が高かった。特に自分と距離を置いて、狙い通りの場所に入口を作るのは相当に難しい。
今回は、一番慣れているノエルに頼んだが、彼も位置の調整の為に後ろに退いた後、目立たないよう微妙にポジションを変えていた。
「ここは一体?」
マイダンジョンにやってきた獣人たちは、状況が掴めずに周囲を見回している。
「ココア、頼む」
(了解です)
そう言った次の瞬間、獣人たちの首輪が淡く光り、そして消え去った。
「あっ!」
急に楽になった首回りに驚いて声を上げている。
「聞きなさい!」
エレールがパンッと手を叩き注意を集めた。
「あなたたちを救い出し、そのおぞましい首輪を外したのは、こちらにいらっしゃるデレク様です」
「え?あ、あー。助けてもらったのか?。ありがとう。礼を言うぜ」
躊躇いながらも熊獣人の男性が頭を下げたが、それを押し留めた。
「大変申し訳ないが、俺は急いで戻らなきゃいけない。詳しいことは、そこの3人の女性に聞いてくれ。一段落したら、戻ってくるので、そこであなたたちのこれからについて、考えよう」
相手に口を挟む隙を与えず、捲くしたてるように言う。
同時に見ているイシュルの方が、イシュルの怒涛の煽りで第2戦に突入しそうな気配だ。
念の為に、早目に戻って起きたい。
「マスター。こちらはお任せ下さい」
イシュルの視界は、エレールたちにも解放しているので心得顔で引き取ってくれる。
「3人ともすまないな。彼らの世話をよろしく頼む」
「「「はい」」」