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ダンジョンは世界だ!  作者: トト
53/134

50 消滅

2019年3月27日:誤字を訂正しました。

2019年4月6日 ;獣人たちの口調を訂正しました。

 年齢も性別もバラバラの獣人たちは、一様に汚れた衣服と首輪とを付けている。

 身体は痩せ細っているが、燃えるような目で侯爵を睨んでいるのも共通していた。


「愚かな反逆者どもよ!侯爵閣下の御慈悲である。そこにいる3人の亜人どもと戦って、勝利せよ!第2層の武威を示せば、罪一等を減じ死罪を免じてくれよう」


 獣人たちは、イシュルたちを見て、そしてすぐに侯爵たちを睨んだ。


「俺たちゃ、こいつらに恨みはねぇ。そんなことで命を惜しむもんかよ!戦うなら、お前らとやらせろ!」


「誰がお前らの意見を聞いている」


 そう言いながら千騎長は右手に持ったこと金属製の板を操作した。


「あぐっ!」


 一番若い5、6歳の犬系獣人の少女が、首を押さえて苦しみ出す。

 おそらく首輪が締まっているのだ。


 首を掻き毟るようにして苦しむ少女の様子に、最初に声を上げた熊系獣人の青年が折れた。


「わかった!戦う!戦うから、やめろ!」


「フン」


 千騎長は鼻を鳴らして、金属板を操作する。


 少女は、首を掻き毟るのをやめたが、激しく咳き込み、真っ青な顔で立つこともできない。

 それを熊系獣人の若い女性と猫系獣人の少女が、介抱している。


「おめぇたちに恨みはねぇが、こういうことなんですスマんな。殺さないようには、する」


「気にするな。そちらがどう戦おうが、あまり影響はない」


 イシュルが淡々と応じる。


「武器も防具もなしで、そのまま戦ってもらおう。蛮族には相応しかろう?」


「特に必要ないしな」


 千騎長の嘲りに、イシュルは平然と返した。


 オロンたちが避難し、周囲を兵たちが取り囲む。槍や抜身の剣を構えて、完全に戦闘態勢だ。戦う振りで侯爵たちを襲うとでも思っているのだろう。確かに獣人たちは、やりそうだ。


 獣人たちは、一塊りになって腰を落として構えている。


 一方、イシュルたちは、イシュルのみ残して二人は後ろに下がる。


「一人で戦う気か?負けた時の言い訳にはならんぞ」


 千騎長が言うと、イシュルが肩をすくめる。


「街一つを落とすなら、3人でやるが、この城くらいまでなら一人で十分だな」


「フン。その大口に見合う実力か、見せてもらおうか」


「いくぞ?」


 千騎長を無視して、イシュルは獣人たちに向き合う。


 獣人たちは、さらに腰を落とす。


 飛びかかろうとする瞬間、イシュルが動く。

 右人差し指を立てて、軽く振った。


 その瞬間、獣人たちの中心で閃光が走る。


 部屋にいる全員の視界が奪われる。


 閃光は、3度に渡って奔った。


「え?」


 女性の声が一瞬して、やがて熱が伝わってきた。


 視力を取り戻した一同が見たものは、何事もなかったかのように佇むイシュルだけだった。


 獣人たちは、いない。


 彼らのいた場所は、石の床が溶岩と見紛うばかりに赤熱していた。


「これでは実力は計れないな。どうする?この城でも落として見せようか?」


 感情を感じさせないイシュルの声が響いた。



◇◇


 信じられなかった。


 僕は、信じられなかった。


「エスタ。大丈夫か、怪我はないか?」


 父さんが見当はずれの心配をしているが、僕は黙って頷いている。


 信じられないというのは、イシュルさんの行動についてだ。

 彼らと会ったのは最近だけど、それなりに理解しているつもりだった。

 特にイシュルさんは、無愛想で融通はきかないが、子供には優しい人だと思っていた。


 少なくともこんなことを平然とする人ではなかった。

 でも、獣人たちは最初からいなかったみたいに、消えている。イシュルさんの魔法に焼かれたのだろう。

 まわりを兵士が囲んでいて、入口も閉まっているのだ。他に考えられない。


「しかし凄いな。痕跡も残さず焼き尽くすとは」


 父さんの言葉にハッとなった。


 そうだ、凄く協力な魔法で焼いたとしても、消せないはずのものまでない。


 おかしい。


 方法はわかんないけど、獣人たちを助けたんだろう。

 だからないんだ。


 焼けた匂いが。

あれれ〜?おっかしーぞ〜〜。

Next Conan's HINT 「臭い」


読んでいただいて、どうもありがとうございます。

次回、獣人たちはどうなったのか?!(バレバレ 

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