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ダンジョンは世界だ!  作者: トト
47/134

45 低レベル(いろんな意味で)

「本来なら、ダンジョン平定軍を起す時に主力となるのは、開拓局の依頼を受けた国王軍だ」


 先程の応接の間に戻り、茶で喉を潤しながら伯爵が言った。


 俺たち一行に、伯爵親子、百騎長、それに最初に戦った十騎長が椅子に座っている。もちろん、護衛も多数立っている。


「だが実際は違う」


 伯爵が意味ありげにオロンを見た。

 オロンはオロンで渋い表情だ。


「国王軍は十騎長の指揮する中隊が出てくれば上出来。前回の平定軍には十騎長のみが、陛下の名代として参加した」

「主力はもちろん、第3層の兵たちだった」


 伯爵と公子が交互に説明する。


「そして貴公らも良く知っていると思うが、平定軍は大敗し我が兵たちも多く犠牲になった」

「しかも、友兵を逃がす為にベテラン兵の犠牲が多かった」

「新しく今上陛下が即位なさって以来、平定軍を起す気配はないが、いつかは再開されるだろう。しかし、ベテラン兵が減り5層への遠征の機会が激減している今、なんの対策もなしに派兵すれば、新たな悲劇が起こるのは明らかだ」


 話しているうちに伯爵の勢いが止まらなくなってきた。

 だが、話している内容が内容だけに、水を差したり茶化そうとは思わない。


 兵のことを考える良い領主だよなぁ。


「そこでだ。第3層の兵を中隊ごとに交替で、5層に送り込みたいと思っている」


「いや、それはしかし」

「なるほど」


 オロンは渋り、ノマは大きく頷いた。


「層を跨いで兵を送るのは、平定軍以外では異例では?」


 オロンが尋ねるが、伯爵は首を振った。


「むしろ日常的に行っているだろう。うちも貴公らも、第4層に兵を出し魔物を狩っているはずだ」


 確かに。


「第4層なら良くて、第5層はイカンという事はあるまい」


「逆に3層では、最近4層にあまり兵を出していないと聞きましたが」


 ノマが尋ねた。前の氾濫の時に尖兵の数が足らなかったのは、それが原因だったはずだ。


「それは、儂の進言故だな」


 百騎長が応える。


「4層の魔物を狩っても、大した訓練にならんしレベルも上がらん。それより、3層でみっちり訓練をした方が、兵は強くなる、とな」


 そこで百騎長は苦く笑った。


「間違っておったようだがな」


「間違いってわけじゃないと思いますが。ようは訓練と実戦の比率ですよねー」

「訓練は大事。でも想定した事しかできない」


「確かにな」


 シャルとノマの言葉に、百騎長は頷いた。


「ということで、貴公らが5層に戻る際に、うちの兵を同行させたい。もちろん糧食も携帯させる」

「おそらく最初は村の近くの魔物を狩るだけでしょうが、そちらの損にはならないと思う」


 いや損どころの騒ぎじゃない。

 魔物の弱い南北のどちらかを持ってもらうだけでも、尖兵の配置がだいぶ楽になる。


 一つ気になる事があった。ので、確認しておく。


「層軍の兵士の平均レベルは、いくつですか?」


「…4だ」


 十騎長が恥ずかしそうに答えた。


「えっ?」


 5層組が一斉に驚きの声を上げた。


「嘘でしょ?」


 シャルが口をあんぐりと開けた。


 非礼と言われるかもしれないが、まあしょうがない。

 今までの訓練か実戦かという話はなんだったんだ、という事だ。


「まずやるべき事は、4層でのレベル上げでは?」


 恐る恐る言うと、十騎長は恥かしげに俯き、伯爵親子は「やはりそういうものか」などと言っている。


 一人、百騎長が憮然としている。


「レベルなど飾りだ!」


 はあ?


 5層組全員がなに言ってんだ、こいつ。という目をしている。


 俺はエステを示しながら言う。


「この少年がレベル6ですが、村では尖兵見習いで、やっと5層での戦闘を許される程度です。レベル4なんて、コボルドに虐殺されるだけですよ」


 百騎長は、ブンむくれている。

 こりゃアレだな。若い時に高レベルの人間に恨みを持ったとか、そういう奴だな。

 しかも、女取られたとか、そういう下らない私怨だ。そうに違いない。


 詳しく聞いてみると、最精鋭たる十騎長の中隊は、全員7レベルということで、ちょっとホッとした。


 ただしそれで平均4レベルということは、他がどれだけ低いんだ、ってことになるんだが。


 伯爵と話しあって、俺たちが5層に戻る時に十騎長の中隊が同行し、他の兵は4層でレベル上げという事で話しがついた。


 しかし、3層でこれなら、王国全体の兵力はどうなってるんだろうね?

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