表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンは世界だ!  作者: トト
45/134

43 模擬戦

「どうしてこうなった」


 城の中庭の一角、そこだけ一般の住人が出入り出来ないように仕切られ、壁で目隠しもされている部分で伯爵の兵と対峙しながら、そう呟いた。


 ここは練兵場なのだろう。他にも何十人という兵がいて、俺たちを見物している。


 さらに伯爵親子にその護衛、オロンたち開拓村一行もいて、完全に見世物状態だ。


「十騎長は、我が兵の中でも手練れだ。遠慮なく戦ってほしい」


 伯爵がそう言うと、相手は訓練用の刃引きの剣をブンブン振り回した。


「伯爵閣下、私の戦い方は魔物相手の邪道な方法です。皆さんの参考にはならないと思いますが」


 さっきの部屋で言った事を繰り返す。伯爵の返事も、さっきの繰り返しだ。


「その魔物との戦い方を参考にしたいんだよ」


 伯爵がニコニコしながら言う。


「その通り。我々は先のダンジョン平定戦以後、ほとんど魔物と戦ってないからね」


 公子が言葉を継いだ。


「そういう事でしたら。しかし、俺たちの戦い方でやるなら、全く面白味がないと思いますよ」


「すぐ終わる」


 おい、ノマ。煽るな。


 慌てるがノマは涼しい顔だ。


 伯爵の若手に立つ、煌びやかな鎧をつけたおじさんが、俺を睨んでいる。

 煽ったのはノマなのに、解せぬ。


「用意はいいかな?」


 公子が確認した。


「では、始め!」


 開始の声がかかると、一拍おいて〈軟泥〉を十騎長の足元にかける。


「俺たちの戦い方だと、こうなっちゃうんですが」


 膝まで泥に浸かり、身動きが取れなくなった十騎長を見ながら言う。なるべく、申しわけなさそうに聞こえるといいんだが。


 伯爵と公子は、しばらく唖然としていたが、クツクツと笑い出した。


「十騎長には申し訳ない事をしたな」


 兵たちに泥から救出された彼を見ながら、伯爵が言った。


「悔しいですが、有効な手だと言うのは認めざるを得ませんな」


 泥だらけの十騎長が、固い地面の上に座り込んで言った。


「特に力任せの魔物には効くでしょう」


 一方で、もっと偉いのであろう鎧のおじさんは納得がいっていないようだ。


「小手先の技ですな」


「そう言うな百騎長。魔物との戦いで得た、実戦的な技だぞ」

「ハハッ」


 伯爵の言葉に頭を下げるが、納得いっていないようだ。


「ふむ。もう少し胸を借りてみるか?」


 百騎長の様子を見て、伯爵が言った。


 そして


「だから、どうしてこうなった」


 目の前で武器を構える11人の兵士を見て、俺は呟かざるを得なかった。


 11人の兵士たち。いわゆる什とか隊と呼ばれる王国軍の最小単位だ。

 騎乗士の隊長と徒士の伍長が一人づつに、兵が9人の構成になっている。


 兵たちは隊長と伍長に率いられて、横に長く配置されている。


 5名が弓を持ち、隊長と伍長の脇に立っているのは、おそらく魔法使いだろう。

 それ以外の兵は槍を構えている。


「ガチじゃないか」


 兵を散開させ〈軟泥〉を一度に食らいにくくし、たとえ食らっても弓や魔法で対抗する。

 俺が接近しようとしても、リーチの長い槍で懐に入らせないようにする。


 さっきの俺の戦い方を見て即席で対抗したと思えば、満点の布陣だろう。


 まあ、甘いんだけどね。

読んでいただき、どうもありがとうございました。


ちょっと短めですが、2戦目に行くと少し長くなりそうなので、ここで区切らせていただきます。

1戦目があっさりと終わらせすぎてしまいました。まあ、戦ってないんですが(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ