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ダンジョンは世界だ!  作者: トト
42/134

40 層都トリモール

 さらに2日ほど滞在して、子供たちの働きぶりを確認した。


「みんな働き者だよな」

「孤児院から、こんなものでしたからね」


 俺が感心していうと、アモスは笑って応えた。


 5歳の子も、畑の草むしりや小屋の掃除といった仕事をこなしている。開拓村でもここまで働き者の子供は、少ないだろう。


「もし、なにかあったらこれを使いな」


 そう言って共鳴石を3つ渡した。


「全て俺たちの共鳴石と同調してある」

「ありがとうございます」


 アモスは、押し戴くようにして共鳴石を受け取った。


「ではな。元気でやりなさい」


 オロンが鷹揚に言う。


「はい、ありがとうございます」


 その脇で子供たち、特に幼女に別れを惜しまれているのはイシュルだ。


 ドランとノエルも人気があるが、どちらかというと男の子人気だった。

 それに対してイシュルは、圧倒的な幼女人気であった。10歳以下の幼女全員から「大きくなったらケッコンしてあげる」とプロポーズを受ける偉業を達成している。


 シャルとノマからは「幼女キラー」という称号を授けられた。

 もちろん、その偉業と称号は念話により、留守番の女性シモベ陣に伝えられている。


 オニだな、お前ら。


 笑顔と少しの涙とともに、俺たちはガルテア子爵領の村と別れを告げた。


 それからの旅は、至極順調だった。


 第3層の中心部、層都トリモールに近づくにつれて、村や町は豊かになっていく。そして、そういった村々には領主が駐在している。


「こういった村が普通なんだがな」


 昨夜止まった村の領主に別れの挨拶をして、オロンが呟いた。


「昔からの領地と新しい領地に、なんでこんなに差があるの?」


 エスタが父親に尋ねている。


「統治の方法については、今の国王陛下の方針なんだろうな」


 自信なさげにオロンが答えている。


 まあ、確かに開拓村に引っ込んでいる俺たちには、わからない話ではある。

 ただ、ダンジョン平定戦を行わないことといい、貴族を増やして統治方法を変えていることといい、今の王様はいろいろと変化を起こそうとしているようだ。


 それが王様自身の意思なのか、変化が良いことなのかどうなのか、は別として。




 さらに2日後。開拓村を出てから18日目。

 俺たちは第3層層都 トリモールに到着した。と言いたいところだが。


「どこからがトリモール?」


 ノマが首を傾げたように、トリモールの境がわからない。


 普通、村や街の外周には城壁や柵、堀を巡らせるものだ。実際いままでの3層の村で例外はガルテア子爵領の村だけだった。


 それがトリモールには見当たらない。


「まさか、まだ街に入ってないの?こんなに賑わっているのに」


 呆れたようにシャルが言った。


「入ってないんだろうな。恐ろしい事に」


 俺が言うとオロンが愉快そうに笑った。


「もうとっくに入ってるぞ」

「え?」

「2時間くらい前に関所を抜けたろ?」

「あれ、街道の関所じゃないのか!」


 確かにあの関所のあとから、家は増えたけど。


「確かにあそこから層都だとすると、城壁は作れないかー」


 シャルの言葉に俺も頷く。街が大き過ぎて、城壁や堀じゃ囲えないだろう。柵だって大変だ。


「そうでもないぞ。2層のバイモールや1層のプリモールには、ちゃんと城壁がある。トリモールにないのは、歴代の第三ダンジョン卿の方針だな」


 オロンが教えてくれる。ちょっと得意気なのは、ご愛嬌だろう。


「へえ」


「第3層でこれだけ魔物がいないのだから、1層や2層で城壁が必要だとは思えませんがね」

「まあその通りだがな、イシュルよ。城壁の相手が魔物だとは限らんということさ」


 イシュルとドランの会話に、オロンの表情が苦いものに変わる。


「それはそれとして、早めに城に入りましょう。どうも目立っていけない」


 ノエルが居心地悪そうに言う。


 確かに人通りが増えるに連れエルフ、ドワーフ、ノームの3人組は目立ちまくっている。

 シャルとノマも、男性の目を惹きまくっているので、俺たち一行は、目立つことこの上ない。


「なんとか層城で、馬車を借りたいな」

「貸してくれますかねぇ」

「駄目でもともとさ。どうせ、『階段』があるのは層城なんだ。無駄足にはならないだろ」


 そう言って俺たちは足を早めるのだった。

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