表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンは世界だ!  作者: トト
38/134

36 盗賊団

 第3層からは、いよいよ王国の本領となる。

 第3層は第三ダンジョン卿が統括していて、さらに様々な貴族が封じられている。

 上下の「階段」付近と中央の層都は第三ダンジョン卿の直轄地である。


 3層に上がったところで、「階段」を守る衛兵から全員の氏名と目的を確認された。


 衛兵たちもイシュルたち3人には驚いたようだが、そこは役目柄か、なんとか表情に出すのを堪えたようだ。


「伯爵閣下に、彼らの御目通りは叶うかな?」


 オロンの言葉に衛兵隊長は大きく頷いた。


「王国に属さない人類が見つかったとなれば、閣下は必ずお会いになると思いますよ。マメな方ですし」


 そう言う衛兵隊長の表情は、遥か雲上の人を語るというよりも、親しい人の噂を語っているようだ。

 なかなか下のものに慕われている方のようだ。


 手続きは、極簡単に終了をして旅を再開する。


「ひらけてはいるけど、あまり畑の状態は良くないわね」


 周囲の風景を見て、シャルが呟いた。


 彼女の言うとおり、畑はあちこちに点在し、働いている人も見かける。しかし、畑自体の状態は村と比べても、あまり良いとは言えない。


 土は硬そうな上、石ころ混じりに見える。作物自体の状態もあまり良くは見えなかった。


「まだ畑を拓いて、間もないのかな」

「そんな風に見える」


 シャルとノマが語りあっている。


「そういえば以前通った時は、ここら辺に人は住んでいなかったな」


 オロンが思い出したように言う。


「どれくらい前なの?父さん」

「父上と呼びなさい」


「…どれくらい前なの、父上」


 溜め息をつきながら、エスタは尋ね返した。


 まだ若いのに苦労人だの、エスタ君。


「今の陛下が戴冠なさった折だから、2年前だな。その時は、ここら辺は林だったような記憶がある」


 なるほど、開墾してまだ2年以内の畑なら、わからなくない。


 そんな話をしていると、一旦畑が切れ、山がちの道になってきた。木々も増えて見通しも悪くなってきた。


 5層なら魔物を警戒するところだが、俺の探知範囲に魔物は見当たらない。


 そのかわりという訳じゃないだろうが、前方に10人近い人の集団を探知した。


(この先に人の集団がいる。数は9人)

(私も探知しました。盗賊かなー?)


 念話でシャルたちやイシュルたちに伝える。


(それにしては弱々しい)


 ノマの言うとおり、探知した気配は小動物と間違えそうな、か細さだ。


 やがて、道を塞ぐように立つ子供たち9人が見えた。


 薄汚れて痩せこけている。全員自分の身長ほどの棒を持っているが、武器というより、倒れそうな身体を支える杖にしか見えない。

 年齢のころは6歳から10歳というところか、ほとんどが男の子だが2、3人女の子もいる。


「おい」


 近づいて行くと、真ん中に立つ一番年嵩に見える少年が声を上げた。


 威勢がいいようなセリフだが、掠れた弱々しい声だ。


「ここを通りたければ、食べ物を寄越せ」


 つっかえつっかえ、それだけを言う。


 盗賊というには、あまりに哀れな様子に、俺たちはどう反応すべきか立ち尽くした。


 それを見た少年は、さらに震える声を絞り出した。


「なにか食べるものを下さい。お願いします」


 剣に手をやることも忘れて、俺たちは顔を見合わせた。シャルもノマもオロンたち、そしてイシュルたちも多分、同じことを思っていたろう。


 いや、この盗賊団(?)は卑怯じゃないか?




 俺たちは、この凶暴な盗賊団にすぐさま降伏して、食べ物を分け与えた。

読んでいただきどうもありがとうございます。


感想欄で、どうして住人募集って話が出てきたのか、というものを頂きました。

本文じゃなく、ここで答えるのも邪道な気もしますが、最大の理由は召喚に使う力素を節約するためです。

もう一つ理由がありますが、そこはちゃんと本文中でわかるように書いていきたいと思います。


もうちょっと先の話になると思いますが。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ