32 接触
水田とやらは、とりあえずやってみようと言う事で、ココアの指示通りに作ってみた。
先に引いておいた水路と、あいも変わらず地魔法大活躍である。
そりゃスキルも四元魔法が成長するって。
米はココアに生み出してもらった。
ちなみにマイダンジョン側の水田も、直接生み出した。この程度の力素の消費は、全く問題ないくらいにはマイダンジョンも成長している。
「そろそろ、マイダンジョンの住人をどうにかしたいですね〜」
とはココアの弁。
住人がいれば、その生活によって生じる魔素や瘴気を吸収できるからね。ダンジョンランクが上がるのも、伊達ではない。
まあ、そこら辺はおいおいに考えるとして、ココアにはある事を頼んでいた。
その事に目処がついたというので、やっと作戦を実行に移すことにする。
「わざわざ改まって、俺たちを集めてどうした」
村長が言う。
村長の執務室には俺たちと村長以外に、オドとオロンがいる。
オロンは、引換所の所長でエスタの父親だ。
村長、オド、オロンと村の幹部が集合しているという事になる。
「まさか結婚の報告じゃあるまいな」
オドが冗談を言うと、村長が顔をしかめた。ま、娘のことでもあるしね。
「それは、また日を改めてということで。今日はもう少し村全体に関わる話です」
「否定しないのか。しかし、村全体?」
「はい。我々が最近、西の森のかなり奥まで踏み込んでいる事はご存知だと思いますが」
「らしいな。オークまで狩っているそうじゃないか」
村長が頷いた。
いや、実はトロルも狩ってるんだけどね。大事になるんで、報告してないけど。
「まさか『階段』を見つけたのか?!」
オロンが身を乗り出した。
次の階層につながる転送扉「階段」を見つける事は、村の主任務の一つだ。
本当はダンジョン平定軍がやるべきことなんだけどね。
「違います。集落を見つけました」
なんだ、と腰を下ろしたオロンと対照的に村長とオドが喰いついた。
「集落?」
「はい。協力的なエルフ、ドワーフ、ノームの集落です」
「なんだと?規模は?!」
「6人ですね」
なんだ、それっぽっちと馬鹿にしたようにオロンは鼻で笑った。
「馬鹿か、お前は」
真っ向からオドが切り捨てる。
「6人で西の森の中に集落を維持できる存在だぞ。下手すりゃ、この村の戦力より強力だ」
うん。まあ、俺たちを入れなきゃ、その通りだ。
オロンは、2、3度口をパクパクとさせていたが、結局おし黙る。
開拓局の職員であるオロンの方が、村の戦闘指揮官であるオドより立場は上だが、人としては、また別だということだ。
「実は2人程、村の外に来てもらっています」
「ほう」
村長とオドが目を見開いた。
「会おう。村に、いや、こちらから出迎えるか」
村長が立ち上がった。