31 ライブラリ
「実はライブラリというのがありまして」
ココアが嬉々として説明を始めた。
初源十ダンジョンから始まったダンジョンは悠久の時の中増え続け、今や神々のみが全容を把握できるのみです。
そもそも、我々のような親子関係のダンジョン以外は観測することすら出来ません。
神々は、それではあまりにダンジョンの成長が非効率になるとお考えになりました。
その結果、生み出されたのがライブラリです。
「ライブラリ?」
はい。全てのダンジョンコアが、ライブラリの内容を読むことができ、書くことができます。
まあ、ダンジョンのランクによって検閲される情報もありますが。
「なるほど、それによって成長に有益な情報を得ることができる」
その通りです。
今回の米と水田の情報なんて、まさにそれです。
純粋に有益な情報だけでなく、自分のダンジョンの自慢を書いたり、流行っている文化を書いたりもします。
思わぬ発見があって、そっちの方が人気がありますね。
「人気ねー?」
はい、中でもキョショーと呼ばれているコアがいまして、唯一のSランクコアではないかと言われてるんですが、そこのダンジョンの文化が実に素晴らしいんです!
おいおい、随分鼻息が荒いな。
「すいません、興奮しすぎました。キョショーの大ファンなもんで」
「ダンジョンコアの社会にも色々あるのは、わかった」
ノマは、だいぶ面白がっているようだ。
「コアのランクってなんなんですかー」
「コアというかダンジョンの成長度合いですね。生まれたばかりでF。知性ある生き物を召喚してE。層が複数になってD。50層を超えてC。それ以上は、検閲でわたしにはわかりません」
「俺たちはEランク。旧ダンジョンは、たぶんCランクってことか」
「その通りです。ランクによって、なにか大きく変わるって事はないはずです」
「ところで」
興味津々といった感じで、シャルが尋ねた。
「ココアはライブラリになにか書いたの?」
「書きましたよ。書くのはダンジョンコアにとって、半ば義務ですから」
「ほうほう。例えば?」
「ダンジョンの成長の様子は、鉄板ネタなので書いてます。でも一番反響があったのはですね」
「反響なんてあるのか」
「そりゃあ、有意義だったり面白い内容には反響がありますね」
「それで一番反響があったのは?」
「やっぱり『マスターと眷属2人の熱い夜』ですね」
俺たち3人が一斉に吹き出した。
「なんだそりゃ?!」
「センスが古い」
「読ませて!」
おいちょっと待て。
ノマとシャルの反応もおかしいだろう。
「大丈夫。マスターたちの名前は変えてます」
「そういうことじゃないから」
がっくりと肩を落とす。
「なんか言う事はないのかよ」
シャルとノマに振るが、二人は平然としたものだ。いや、若干頬を染めているか。
「まあ実害ないし」
「今夜のことがどう書かれるかと思うと、ちょっと興奮するくらいかなー」
変態だ。変態がここにおる。
まあ確かに実害なさそうだけど、俺の心のダメージ以外は。
「まあ、節度を持ってやってくれ。あと俺の心の平穏の為に、報告なんかいらないからな」
「「「えー?!」」」
なぜシャルとノマも不満そうなんだ。
「そういえば、ココアがときどき訳の分からないへんな事言ってたけど、ありゃライブラリに関する話なんだな」
「へんな事だなんて、ヒドイ!キョショーが広めたダンジョンコアたちの流行です!」
「お前たち、神々が作った世界システムとやらなんだよな」
「そうです!」
エヘンと胸を張るイメージが見える。
「神々って実は、いい加減なのか?」
そんな疑問を抱かずには、いられなかった。
ちなみに、その夜の戦闘はそりゃーもー凄かったです。
読んでいただき、どうもありがとうございます。
いわゆる設定回です。
設定回ですが、この設定が伏線となって物語にかかわる予定は、ありません。
あくまでフレーバー程度です。