30 水田
「えー、話し合った結果、家は倉庫、男女別で一軒づつ、作業用の小屋と計4軒とすることにしました。これは、マイダンジョン側も一緒ね」
「「「はい!」」」
シモベたち6人が一斉に返事をした。
女性陣の表情も、明るくなっている。
あと決めるべき事は、水の確保と鉱石の確保だ。
水は、集落予定地から500米程離れた場所に川があるので、そこから水路で引き込む事にする。
地魔法大活躍である。
鉱石は、森の探索ついでに、露床か浅い場所の鉱脈を見つけるしかない。
マイダンジョン側にも、鉱脈を生み出すつもりだけど、旧ダンジョン側にもある方がいろいろ都合がいいのだ。
とりあえず、鉱石の確保が未定となったが、それ以外は粛々と実行していくことになった。
一応、俺たちの本拠は開拓村なので、森で活動するのは、1回5日程度だ。3日程村で休憩して、また森に向かう。
一見、なかなか大変な生活に思えるが、実はそうでもない。
移動はダンジョン利用の瞬間移動方式だし、夜は村だろうと森だろうと、マイダンジョンで過ごしているので、あまり変化がないのだ。
村にいるときでも、マイダンジョンで寝るようになったのは、まあなんだ。シャルとノマの声が、大きいからです。はい。
そんな生活を1ヶ月程続けて、森の拠点もだいぶ様になってきた。
「水田?」
森の拠点での仕事を終え、マイダンジョンに引っ込んでの夕食の後、雑談中にココアが次に作りたいものとして、そんな事を言い出した。
夕食後、次に控える夜の戦闘に備えて、体力温存モードに入っていた俺は、正直頭の回転も半休止中で、ココアの台詞もほとんど聞き流していた。
余談ではあるが、シャルとノマ相手の夜の戦闘だが、連戦連勝の快進撃中である。ただ、シャルもノマも、負ければ負ける程次戦へのモチベーションが上がる、という地獄の様相を呈している。
シモベたちも、家ができてからは森の拠点で寝ているので、周囲に気を使わなくてもいいし、妙に環境が良くなっちゃってるんだよな。
マイダンジョン側にも家を建てたのに、シモベたちが旧ダンジョンで生活しているのは、森の拠点の生活感を高めて、偽装の完成度を上げようという以外に特に他意はない。
露天風呂まで作っちゃって、イチャイチャしているから居辛いということは、ないはずだ。たぶん。
「も〜、聞いてなかったんですか?米を作る為の畑の一種です」
「いや、そもそも米とやらも知らないし」
シャルとノマを見るが、2人とも首を振っている。
「米は穀物の一種ですね。まず、米に2つの大きな利点があります」
俺たちの脳裏に、ココアがない胸を張って指を一本立てる姿が浮かんだ。
「第1に栽培に必要な広さに比べて収穫量が多い」
「ほほう」
「もう一つは、食べるまでの手間が、小麦などに比べて少ないんです。味を気にしなければ、収穫後に脱穀して茹でれば食べられます」
「粉にしなくていいんだ」
ノマが尋ねた。
「粉にする食べ方もありますが、そのまま茹でて…米の場合『炊く』と言いますが…食べる方が多いですね」
「美味しいの?」
「味は濃くありませんが、美味しいらしいですよ。もっとも、美味しく食べようとすれば、それなりの手間暇がかかるそうですが」
「ココアは、米をマイダンジョンの主食にしたいんだ」
「はい。米を水田で栽培すると、もう一つ大きな利点があるので」
「水田で栽培すると?」
「普通の畑でも米は栽培できます。でも、水田で育てると連作障害が起きにくいんです」
「連作障害ってあれか、同じ畑で同じ作物を育て続けると、うまくいかないっていう」
そのため、村の畑は小麦、葉物、根菜、豆類を順番に入れ替えている。
「それです」
「ココアの話を聞くと、米を水田で育てると、畑の総面積を狭くできるって事?」
ノマが尋ねた。
「その通りです」
なるほど。労力面からも拠点を守る上からも、有りな気はする。
「でも、ココアはいろんなことに詳しいわねー。ダンジョンコアは、みんなそうなの?」
「エヘヘ〜。それはですね〜」
シャルの問いに、急にココアの態度が変わった。
読んでいただきどうもありがとうございます。
ちょいちょい軽いエロが挟まりますが、あまり露骨には描かない予定でいます。
まー、描く能力が、ないからなんですが。