29 恋愛事情
畑作りと家を建てる事、これは旧ダンジョンの方と並行してマイダンジョン側でも行う。
マイダンジョンの方は、予想外の出来事で大きな屋敷が手に入ったが、シモベたちは「マスターと奥様方でお使いください」と、相変わらずのテント暮らしだ。
食事に関しても肉類はともかく、野菜類は村に頼るしかない。村に生活拠点のある俺たちはともかく、シモベたち6人分の野菜を消費したら、さすがに不自然だろう。
とりあえず、マイダンジョン側に力素を消費して最小限の畑(作物付き)を生み出した。あとは、地道に人力で開墾する。
旧ダンジョン側は、ひたすら人力で開墾だ。ノームの2人が、大活躍である。エルフ組も植物の育成という事で、大きな戦力になっているが、その外見のせいで農作業というより、貴族の趣味の庭園作りといった風にしか見えない。
ドワーフ組は、家の建築の中心になってもらっている。
「旧ダンジョン側の集落は、共同倉庫1軒に、各種族別に3軒でいいんじゃない?」
俺がそう言うとシモベたち、特に女性陣が微妙な表情になる。
「それは、我々につがいになれという、命令ですか?」
エレールが尋ねてきた。
あれ?女性3人が、ちょっと涙目なんだが。
「いや、結婚相手を強制するつもりはないけど、しゅぞ」
突然、シャルとノマに拉致される。
シモベたちと離れたところで、俺を挟むように立つ。
「この無神経」
どストレートにノマがなじる。
「え?なんのこと?」
「あのねー。シモベの女性たちの理想の相手って誰だと思う?」
そんな、呆れ果てたように言うことないじゃないか。
しかし、理想の相手?
あの神格化具合を見ると、もしかして?
「え?俺だっていうの?」
「正解」
「わかってるじゃない」
「え?え?でも俺、シャルとノマがいるし」
混乱して言わんでもいい事を口走る。
だが2人の表情を見るに、正解の反応だったらしい。
あ、ちなみに先日2人とは一線を超えてしまいました。
まさかの2人同時。しかも必然的にココアの監視付きという、いろんな扉が開いてしまいそうなひとときだった。
「ラッキーとか言ったら、引っ叩いてた」
そんな事言いながらも、ノマはちょっと嬉しそうだ。
「でもね、敬愛する創造主の側にいて、女性が夢を見るのもわかるでしょ」
「ああ、まあなんとなく?」
あの態度を見てると、あり得るかもしれない、とは思う。
男性陣だって、誘えば喜んで応じかねない雰囲気がある。
(ハアハア、薄い本が厚くなりますね)
ココアの興奮のポイントと、興奮の仕方が謎だ。
無視するけど。
(しょぼーん)
「その理想の相手で、絶対の主人である人物から『種族同士で結ばれるのが自然』とか言われたらどう受け止めると思う?」
「ああ、そりゃ残酷なのはわかるが…。手を出す気は無いぞ」
「今はそれでいい」
「今は?将来は手を出すべきって事?」
あ、視線が怖い。
「そこで、わたしたちが手を出すべきって言うと思う?」
「ホント、無神経」
ノマ。言い切るのはキツイので、勘弁してください。