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ダンジョンは世界だ!  作者: トト
29/134

27 スローライフ 詭弁を添えて

 村に無事帰還して、しばらくの間は、目が回るような忙しさだった。


 シャルやノマとのパーティに戻ると、即、西の森の探索を本格化させたのだ。

 もちろん、村を出てしまえばシモベたちと一緒だ。


 人数が増えて楽になったかというと、そんな事はない。やる事も増えたからね。


「集落を作る?この西の森の真ん中に?」


 最初に提案した時はシャルもノマも、なんでそんな事を、といった感じだった。

 シモベたちは、疑問を持たずにヤル気マンマンだったけど。


「そうだね。イシュルたちが住んでいた、という設定の集落をつくりたい」

「設定?あ、そういう事」

「なるほど、考えましたねー」


 ノマとシャルが得心すると、逆にシモベたちが疑問を持ったようだ。


 だが、遠慮して疑問を口に出せないご様子。


「わからない事があったら、気軽に尋ねていいよ。意図がわからないまま行動して、目的を達成できない方が困るしね」


「は!では恐縮ながら、マスターの御意志をお教え願えますでしょうか」


「そんな難しい話じゃないよ。いつまでも、イシュルたちを秘密にしておくのも面倒だろ。イシュルたちの住む集落を見つけたって事にするのさ」


 そう言うと、シモベの4人は「そこまで我々のことを考えていただけるとは」などと感激している。


 そこで俺はニッコリと微笑んで言った。多分悪い表情をしてると思う。


「だから4人とも、我々3人を普通の人として扱って、対等な口調で話すように練習してね」


「そ、それは!」「マスター、お許しを」


 4人が悲鳴をあげた。


「まあねー。最近偶然に遭遇した集落の人が、敬ってくるって怪しまれるもんねー」

「デレクの計画を、うまくいかせる為にやむを得ない」


 シャルとノマも、追い込んでくる。


「真木の事も、肥料の事もイシュルたちの知識として伝えたいんだよね。だから、本当に重要なことなんだ」


「し、しかしマスターに対等な口をきくなどと、大それた真似を…」


「うーん。擬装ができない人は、村に紹介できないから、今まで通り、マイダンジョンに待機してもらって、影からフォローって事になるなぁ」


 4人の表情が絶望に染まる。


「お側仕えの機会をみすみす…」

「しかしマスターに対し」

「主命が…」


 なんかブツブツ言いだしたよ、おい。


「4人とも」


「「「「ハッ」」」」


 厳しい顔つきでシャルが呼びかけると、シモベたちは直立した。


「あなたたちのデレクに対する敬意は、表に表さなきゃ伝わらないほど、薄っぺらなものなの?」


 シャルの言葉に、愕然とした表情を見せる4人。

 一方、ノマとココアと俺は、


(詭弁)

(詭弁ですね)

(見事な詭弁だ)


 ある意味、心を一つにしていた。


「いい?忠誠を履き違えては駄目よ。敬意も大事だけど、本当に大事なことは、主人の意思を実現させることではないの?!」


 4人は、うなだれて聞いている。


「わたしを見てみなさい。一見、デレクを呼び捨てにしたり、からかっていたり、不敬にみえる態度をとるわ。でもね、それはデレクを孤独にしないで、明るく過ごさせる為に、あえてやっているの!」


(あー)

(途中までは、それなりに良いこと言ってたんですけどね〜)

(詐欺師)


 苦笑する我々と違い、シモベたちは感激の面持ちだ。


「シャル奥様」

「そんな御深慮があったとは」


「いい?あなたたちに、いきなりそこまでしろとは言わない。でも、デレクの計画に必要なら、努力するのがシモベの忠誠ではないの」


 俺とノマは、拍手をする。

 シャルは、こちらの方を見ると、爽やかな笑顔で一礼した。


 いろいろ言いたい事もあるが、4人が納得してくれたから、まあいいか。


「マスター、我々が心得違いをしておりました」


 イシュルの言葉に合わせて、シモベたちが深々と頭を下げる。


「わかってくれたらいいんだ。じゃあ、今この時から練習しよう」


 口調もそうだけど、容易く騙されないような教育も必要かなぁ。


「承知いた…いえ、わかりました」


 かくして、擬装集落作戦は開始された。

読んでいただき、どうもありがとうございます。


しばらくの間、スローライフ(偽装)成分が続く予定です。

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