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ダンジョンは世界だ!  作者: トト
24/134

22 奪取

 なだらかに続く平地の中に一軒の家が建っていた。

 思わずポールたちを見るが、あからさまに目をそらしている。


「材料運ぶだけで、大変だったろうに」


 そう水を向けると、2人程が思わずといった感じで深く頷いた。


 うん。馬鹿だね。


 俺の視線で失策を悟ったのか、4人は天を仰いだ。


「あそこから木材を運んだのか」


 右手に見えるちょっとした森を示した。


「ああ、2年掛かりでな」


 観念したようにポールが言う。

 2年とはまた、妙なところで気の長いことだ。


「最初はちょっとした、休憩小屋のつもりだったんだ」


 その発想は間違ってない。

 俺たちのマイダンジョンもそうだが、安心して休める場所があると、探索の効率が違う。


 あくまで休憩に使うなら、だが。


 その建物に近づくにつれ、俺は呆れるのを通り過ぎて感心すらしていた。


 周囲を囲む柵と魔物避けの結界石、これは安心して休むためには必要不可欠だから、まあわかる。

 だが、規模がでかい。

 そりゃそうだろう。中にある建物がデカイのだ。


 村にだってこれだけの規模の建物はない。しかも、総二階建てだ。

 村長の家の倍はありそうに見える。


「探索に行くと称して、ここにこもっていたわけか」


「見える範囲の魔物は狩っていたさ」


 不服そうなポールの言葉に、溜め息をつく。


 出発前の村長の話と合わせると、こんな村に近い位置でこもっていて、通常の探索と同じくらい魔物が狩れるという事だ。

 さらに奥の、本来の探索場所にはどれだけ魔物がはびこっていることか。


 俺が、その事を言うと4人の顔色が真っ青になる。


 村がゴブリンの群れに襲われた原因が、やっとわかったらしい。

 探索と言いながら実際には、この建物でのんびり酒でも飲みながら過ごしていたのだろう。その結果が、ゴブリン襲来だ。

 奇跡的に死者がいなかったから、村長も寛容だったが、本来なら死罪に問われてもおかしくない。


 そんな話をすると、4人はその場に倒れ込みそうになっている。


「村長に感謝して、心を入れ替えるんだな」

「ああ」


 4人は、壊れた人形のように首をカクカクとさせた。


 建物の間近に来ると、いろいろと荒されている様子が見て取れた。


 ゴブリンの群れは、ここにも来襲したらしい。

 結界石も、万能じゃない。魔物の集団移動には、気休め程度の効果しかない。

 人がおらず戦いが発生しなかったので、外見はさほどではないが、中は酷い事になっているだろう。


「結界石だけ回収して先に進んでいてくれ。俺は、中を確認してから後を追う」


「わかった。一人で大丈夫か?」

「ああ。それと念の為に言っておくけど、ここは焼くからね」


「だろうな」


 肩を落として出発するポールたちを見送って、俺は建物に入る。


 すでにゴブリンたちがいないのは、探知で確認済みだ。

 中に入ると、思ったよりは荒れていない。保存していた食料を喰い散らかされている程度だ。さすがに家具の類はテーブルと椅子程度なので、がらんどうの部屋にゴミが散らかっているだけ、といった感じだ。

 二階には登ってさえいない。


「階段を登るという、発想がなかったかな?」

「そうかもしれません」


 後ろで声がした。

 入ってきたイシュルだ。


「この建物をいただいてしまおう。できるか、ココア」

「簡単ですよ。マイダンジョンの真ん中でいいですね」


「それでいい。あとは、周りの柵を燃やして擬装工作だな」

「さすがに燃え跡が少ないでしょうから、西の森組から、適当に端材をもらってきます」


 ヴァニラの案に頷いた


「そこら辺は任せた」


 今や念話でシャルたちとも連絡を取り放題だ。いろいろと捗る。


「掃除が必要だが、こんな立派な拠点が手に入るとはね」


 ポールたちの上前をはねるような感じになるが、まあここは有効利用させて頂こう。

読んでいただいてありがとうございます。

少しずつブックマークしていただいている方も増えてきて、嬉しい限りです。


次回は、シャルとノマ視点の話となる予定です。

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