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ダンジョンは世界だ!  作者: トト
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19 蹂躙

 今の能力で1割程の魔力を込めて〈火球〉を放ってみた。

 見たところ、ノマもシャルも同じくらいの規模だ。厳密に言うとシャルは、やや小さいくらいか。


 いずれにしても、今までこんなに魔力を込めた〈火球〉を放ったことはない。

 その結果


「ち、ちょっと近かったかな」

「威力もあげ過ぎたかもね」


 自分たちの放った魔法の爆風で、危うく吹き飛びそうになった俺たちは、顔を引攣らせながら頷きあった。

 少し離れたゴブリンたちの右翼は、酷いことになっている。


 なっていると言うか、なくなっている。あるのは、巨大な穴だ。

 抉れた土と共に、おそらく100余りのゴブリンが消し飛んだろう。


 北に回った野戦隊と柵の内側にいる防御隊も、今の爆発を合図に攻撃を開始した。

 ゴブリンたちは大混乱である。


 逃げ出す頭もないのか、右往左往して爆発痕の穴に落ちるものも続出した。


「〈整地〉」


 あ。そこに魔法で土を被せて生き埋めにした。

 思わずノマの方を見る。


「私たちが突撃するのに、穴が邪魔だから」


 ノマにしては珍しい、言い訳がましい口調で言った。


「いやいや、驚いただけで、良い戦法でしょ」


 俺はニヤリと笑って続けた。


「あとでコッソリ掘り起こすことも出来るだろうし」


「あ、そっかー。さすがに村のみんなの前で、ゴブリンの死体をマイダンジョンに放り込むわけにもいかないっかー」

「ええ!?そんな。こんなにたくさんいるのに!」


 ココアが悲鳴を上げたが、まあそれはそれとして。


「とりあえず目の前の問題から片付けよう」


 ようやく混乱状態から抜け出しつつあるゴブリンたちに目をやって、2人をうながした。


 混乱が少し収まったとはいえ、所詮はゴブリン。統一的な行動が取れるわけじゃない。せいぜい突撃か後退か。それも周りの5、6頭で合わせて、程度だ。


「行くよー」


 シャルの合図で俺たちは前進を開始した。

 シャルが半歩前に出て、右に俺、左にシャルが立つ。

 村側からゴブリンの右翼を撫でるように蹂躙していく。


 シャルと俺は剣や短槍を振り回して、ノマは時折魔法を撃ち込む。


 ゴブリンたちをある程度削ったら、一度離脱する。あとを追おうとしたゴブリンは、ノマの魔法で消し飛んだ。


 滑らないように武器と手足に〈浄化〉をかけたら、村側からもう一度ゴブリンたちを削って行く。


 さらにもう一度繰り返すと、内側に逃げようとする奴と俺たちに向かおうとする奴で阿鼻叫喚の状況になっている。


 こちらからは良く分からないが、北側も似たような状態のようだ。


 そこに村から魔法と矢が雨のように降り注いだ。

 勝負所と見たのだろう。全力攻撃だ。


「勝負あったね」


 ノマが呟いた。

 村からの全力攻撃が始まると、少し後退して戦況を眺めていたが、ノマの言う通りゴブリンたちは潰走し出した。


 今までの統一感のない闘いぶりはなんだったんだ、と思わずにいられない息の合った全面潰走だ。


 半分以下に数を減らした群は、数多くの死体を残して、あっという間に見えなくなった。


 村や野戦隊から勝鬨が上がっている。


 そんな中、俺は村の損害とゴブリンの死体をどれくらいマイダンジョンに取り込めるかが、気になっていたのだった。

読んでいただきありがとうございます。


次回投稿は1月14日の予定です。

書き溜めたストック分がなくなってしまって、かなり綱渡り状態ですががんばります。


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