2 コアとの遭遇
「だ、誰だ?」
突然耳元で囁かれた女性の声に、俺は慌てて辺りを見回す。が、誰もいない。
「驚かないで。ご主人様。私はあなたと同化したの」
「は?」
声の言うことに、俺はさっきの光景を思い出す。手のひらに吸い込まれた、小さな玉を。
「あの玉か!」
「さすがご主人様。正解です。私は、あなたに吸収されたダンジョンコアです。生まれたばかりですけどね」
「ダンジョンコア?それって、ダンジョンを支配するっていう?」
「そうです!もっとも、私は、生まれたばかりなんで、まともなダンジョン持ってませんけどね。3畳一間の狭小物件です」
ダンジョンコアの最後の台詞は、ほとんど理解できなかった。
「このダンジョンのコアじゃないんだな?」
「とんでもない!こんな50層を超えるダンジョンとは、比べものにもならないですよ。あっちが超セレブなら、私なんて零細企業の新人パートみたいなもんです」
なんか、このコアちょいちょい訳の分からんこと言うな。
「論より証拠!私のダンジョンをお見せしましょう」
そんな声とともに、目の前に何かが現れた。
なんというのだろう。揺らぎと言うのか霞と言うべきなのか。人の大きさくらいの違和感が、目の前にある。
「ささ、その元主を持って、中に入っちゃってください」
元主というのは、コボルドの死体のことらしい。言われるがままにコボルドを担いで、違和感の中に足を踏み入れてみた。
「ようこそご主人様、我等がダンジョンへ!」
テンション高く声が叫んだ。