15 共鳴
「〈整地〉!」
シャルがトロルの前に立つと、すかさずその下の地面が持ち上がった。
ノマの土魔法だ。
シャルの剣がトロルの首に届く高さになった瞬間、トロルの頭が飛んだ。
シャル渾身の一刀だ。
だが、飛んだ頭部からは血が吹き出ているが首からは、血が溢れもしていない。
それどころか、断面が盛り上がりつつある。
「まだ再生してるー」
そう叫んでシャルは、土の台から降りた。降りるついでに、トロルの両腕を斬りとばしている。
のんびりした口調に比べて、やることはエグい。
「〈炎〉よ!」
俺は火魔法の最も基本的な魔法陣を心象に描き、魔力を充填した。
トロルの首に高温の炎が現れ、傷口を焼いた。トロルの身体がビクビクと震えている。
「シャル。トロルの命石を取って」
そう言いながらノマがトロルを貫く石柱を解除した。
倒れたトロルの胸を切り開き、命石を取り出す。
ビクビクと動いていたトロルが、完全に止まった。
「いやー。さすがトロル。しぶといなー」
血まみれになった自分に〈洗浄〉をかけながら、シャルがぼやいた。
「まあ、死体をマイダンジョンに取り込む必要がなきゃ、魔法で消し炭にした方が早そうだがな」
「そんな勿体ない!」
ココアが悲鳴のような声で抗議する。
「だから、なるべく綺麗な死体にしたでしょ」
切り落とした頭部や腕をマイダンジョンに放り込んでノマが言う。
「トロルなんて討伐報告しない方がいいか。命石も吸収しちゃう?」
「吸収します!ノマ素敵!愛してます!!」
「いや、あなたに聞いてないから」
トロルの命石は、満場一致でマイダンジョンに吸収させることとした。
もともと、あまり目立っても困るので、今回の遠征で倒した魔物の半分くらいは、討伐報告しないつもりだった。
それでも、以前の実績からすると討伐数が2割増しほどになる。
「だいぶ成長しましたから、そろそろ虫や鳥を召喚してもいい頃ですね」
ココアはホクホクだ。
「ほう。その次には小動物辺りを召喚?」
興味深げにノマが尋ねた。
「いえ、その前に森を育成するので、管理者として人類を1、2人召喚した方がいいでしょう。エルフとかドワーフとか」
「エルフにドワーフかー。あまり見たことないねー」
「1層には極少数いるらしいよ」
「へー」
「王家に飼われてるらしい」
「おおう」
シャルに俺、そしてココアはドン引きである。
闇が深いな、王家。
その時である。
我々3人の持っている共鳴石が震え出した。
読んでいただいてありがとうございます。
リアルタイムで読んでいる方は、明けましておめでとうございます。
話の区切りの関係で、やや短めですが平成31年最初の投稿です。
しかし、新年号は何になるんでしょうね。
などと思いつつ、次回からしばらく、デレク1人称ではない話となります。