13 スキルの話
それから2度、ゴブリンやコボルドを蹴散らして森の手前までやって来た。
今は、マイダンジョンで休憩中である。
ちなみに、我々はレベルが2に上がった。
各能力が、最低で5も上がっていて、我ながらちょっとビビる。
スキルで探査と潜伏が生えたのは、素直に喜ばしいけどね。
昔から、ずっと鍛えていた結果だ。ただ、同じくらい使ってる短槍術が生えないのは、解せない。
スキルが生えたって、発動がスムーズになるくらいで、威力なんかが大きく変わるわけじゃない。だけど、今までの努力が認められた感じがあって、高ぶるものがある。
ちなみに、シャルとノマもレベルが上がった。
ノマは魔力と敏捷性が馬鹿上がり。シャルは、体力と筋力が驚くほど伸びた。
「筋肉馬鹿一直線になってるー」
「大丈夫。ちゃんと女の子らしい身体だし」
落ち込んでるシャルに寄り添って、ノマが慰めている。
身長が低めで皮の鎧を着ていても巨乳っぷりがわかるシャルと、俺と変わらない背丈で胸もスレンダーなシャルが寄り添っているのを見ると、背徳的で実にこう、来るものがある。
(百合百合しいですね〜。実に尊い)
ココアが、うっとりとした声で言った。
相変わらず意味が良く分からんが、なんとなく言わんとすることは掴めた。
そして、同感である。
「さて休憩は終わりだ。行こうか」
わかってはいけない事がわかってしまったような気がする。そんな思いを振り払い、2人に声をかけた。
今、入ろうとしている西の森は、俺たち3人に割り当てられた、言ってみればダンジョン攻略の最前線だ。
魔物のレベルも跳ね上がる。今の俺たちも油断していい場所ではない。
「そうね、行きましょう」
もとより本気で落ち込んでいたわけでもないシャルも、気合いを入れ直す。
「今の私たちの力が、どれだけ通用するか楽しみ」
ノマがニヤリと笑った。
男前やな〜。
西の森に入って丸一日。
俺たちは、立派に通用していた。
今までは、1時間程度、3〜4戦程も戦えば消耗しきって森から撤退するのが普通だった。
攻略とは名ばかりで、森の周囲部をウロチョロしていただけだったのだ。
それが丸一日の連戦だ。
能力アップの恩恵ももちろん、やはりマイダンジョンの存在が大きい。
いつでも入れる安全地帯があるというのは、実に有り難かった。
ただし、距離的にはあまり稼げていない。
魔物を見つけると、手当たり次第に狩っているせいもある。
なにより魔物の生息密度が、違うのだ。強くて数が多い、今まで攻略が進まなかったのも無理はない。
1日で全員レベル4まで上がっている。
ココアもマイダンジョンが成長して、いたくお慶びだ。
今は、そのマイダンジョンで昼休憩中だ。
領域は、直径50米程度になって壁の圧迫感も大分薄れた。
「なんかスキル生えた?」
ニヤニヤしながら聞いたのはシャルだ。
自分は念願の探査が生えて、ゴキゲンのご様子。
「ノマは?」
質問をノマにパスする。
「四元魔法のレベルが上がった。あと杖術」
「え?!」
スルーの為のノマへの振りだったのだが、その答えに動揺する。
俺は小剣術か短槍術のスキルを目指しているのだ。後衛担当のノマに、近接戦系統のスキルが生えたとなると、心穏やかではいられない。
「杖術?俺は投擲と四元魔法が生えただけなのに?」
仮にも前衛の持つスキルじゃないよなぁ。以前から持ってるスキルだって、観察眼とかそんなんばかりだし。
「デレク」
ノマがカップに残っていた、お茶を一息に飲んで、俺の方を見た。
悪い表情をしている。
「あなた、さっきのオークの群れとどう戦ったか、覚えてる?」
「そりゃ覚えてるさ。ノマと一緒に空壕と胸壁を作って」
「土魔法でね」
「胸壁の内側から攻撃した」
「シャルは弓で、私は魔法で、そしてあなたは投石でね」
「妥当なスキルの生え方じゃない」
シャルが言った。
「短槍でも攻撃したぞ」
「空壕に落ちたオーク2匹を壁の上からね。それも一撃で」
だって、もう虫の息だったんだもんさ〜。
「念のために言うけど、褒めてるんだよ」
「はい?」
「全く危険な目にあうことなく、10匹以上のオークを殲滅させるなんて、作戦の立案者を褒めるしかないでしょ」
「その割に悪い表情してるけど」
「それは、スキルで悩んでるデレクが面白いから」
「カワイイとも言うね」
「「ねー」」
左様ですか。
女の子はわからん。