131 その後
完勝だった。
300対2000という、7倍に達する敵ではあったが、終わってみたら味方は負傷者多数ではあるが死者なし。一方王国軍は死者700を超える大損害だった。
それでも、まだ兵力はこちらの4倍くらいあるのが、笑えるが。
いくら兵力があっても、士気が崩壊して戦う意志をなくしてしまえば、こちらの勝ちだ。
負傷して戦場に放置された王国兵も300人ほどいたが、動ける程度に治療して、お帰り願っている。
こっちの兵力と同じくらい捕虜がいたって、持て余すだけだ。
ただ、どうしても戻りたくない、という兵もそれなりにいた。
彼らは伯爵たちに取り調べてもらい、問題がないようなら、5層に受け入れる事にした。
奥地で開拓してもらえば、万が一間者がいても、なにもできないだろう。
そうして、約一か月後。
5層の旧開拓村ー今はヘキサモール、または単にヘキサと呼ばれているーで、ある式典が開かれた。
「ここに、帝国の建国を宣言する!」
キャシャール伯爵改め皇帝が、建国宣言を読み上げた。
3層の約3分の1、5層全域、6層の約半分を領土とする国家の誕生だ。
帝国と言っているのは、住人が、人、獣人、エルフ、ドワーフ、ノームに6層の魔物と多岐に渡っているからだ。
まあ、最大の理由は王国に対抗する為なんだけど。
3層とヘキサを皇帝直轄領として、その他の5層は2人の公爵が分割して統治する。
で、その公爵のうちの1人が。
「あ、村長。公爵叙爵おめでとうございます」
何故か未だに村長呼ばわりされている元層長である。層長という役職も、あまり定着してなかったけど。
「祝ってやるなよ。唯一こいつだけ、権限が下がってるんだからよ」
オドがニヤニヤ笑いながらいう。
確かに5層全体を管理する層長から、5層の半分を支配する公爵だから、権限が下がったとも言える。
ちなみにオドは公爵軍の指揮官におさまっている。
「そういえば、ノマは公爵令嬢ッてわけかー」
シャルの言葉に、ノマは首を振る。
「夫人」
俺を指差して一言。
「それはそうか。でも身分がある分、ノマが第一夫人になっちゃうかー。別に構わないけど」
シャルは第2夫人より、寵姫の方がエロいかな、などとワケのわからない事を言っている。
「違う。ノマが第一夫人」
「どうして?」
ノマの口が、さ行の発音をしようとしているのを見て、焦って口を塞いだ。
(お前、先に入れた、とか言おうとしてただろう)
(事実)
その念話の会話を聞いて、シャルとココアが爆笑している。
「疲れた。式典も終わったし帰るか」
そこへ、もう1人の公爵エウォルが声をかけてきた。
「もう戻るのか?総督」
「ああ、俺の仕事はダンジョンの探索だからな。とっとと帰って始めるさ」
そう。俺は6層総督という事で、最前線を任される事になった。
地位はともかく、今まで通りの仕事というワケだ。
もちろん、自分のダンジョンの管理も。
「さあ帰ろう」
区切りがいいところで、一旦完結とさせていただきます。
続きは、ある程度書き溜める事が出来てからとしたいと思っています。
拙い文章でしたが、ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございます。
もし、愛想が尽きていなかったら、もう一本の「暗黒神(封印済)に転生したので、全力で暗黒神の復活を阻止します。」の方もお付き合いいただけると幸甚です。
本当に、ここまでお読みいただき、どうもありがとうございました。