121 反攻その2
「餌ね」
伯爵が苦笑する。
餌になるものに、思い当たるものがあるらしい。
「3層兵全兵力300人が、正面から戦いを挑めば、王国軍もそれに応じるでしょー?」
シャルがニッコリと笑う。いい笑顔だ。
「しかし、兵力を全て出して、もし留守を突かれたら」
「3層兵を排除しちゃえば、あとは好き勝手出来るんだもん。向こうも全力で来ますよ」
公子の懸念をシャルは笑って否定した。
実は裏もある。
今3層では密かにコゴローンを10体、鳥のシモベを3羽活動させている。
彼らの偵察で、こちらが奇襲を受ける事はほぼない。
「王国軍を集中させてしまえば、われわれの力も生きます。圧勝することも不可能じゃありませんよ」
「その餌には私も含まれるのかな?」
伯爵が尋ねた。
「その方が、喰いつきがいいことは確かです」
「よかろう」
伯爵は決断した。
「兵に命をかけさせるのだ。効果は最大にすべきだ」
「父上、私が参ります」
公子が志願した。
「ならん」
伯爵が厳しい表情で却下する。
「お前は次代に責任を持つべきだ。王国軍と戦い、5層に避難したのち、デレク殿たちと協力し、新しい国を作ることになるだろう。お前は、そこで力を尽くすのだ。次の戦いには、お前の仕事はない」
「父上!」
いや、まあその。感動的なシーンっぽくしてるけど、王国軍との戦いで、完勝するつもりでいるんだけどな、俺。
さすがに犠牲者なしは無理だと思うけど、一桁に抑えることを狙ってるし。
兵士の平均レベルも、こちらの方が上だし不可能な話じゃない。
不安材料は、いまだに王国軍が増強されつつあることと、王国軍兵士の一部のレベルが上がっていることだ。
レベルが上がっている事の理由は、3層の民を殺したことによる。
すでに領民の避難は完了したので、当面の心配はいらないが、王国軍はレベルの上がった兵士を主力にして戦い、更なるレベル上昇を狙ってくるだろう。
逆に俺たちとしては、相手の高レベル兵は殲滅するつもりでいる。
読んでいただき、どうもありがとうございます。
体調不良で投稿が不定期になっております。
申し訳ありません。
以後投稿日は守るよう頑張ります。