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ダンジョンは世界だ!  作者: トト
122/134

119 救出その4

「イブン、食事が出来たよ。みんな呼んできな」


母親の声がした。

早いもので、イブンがこのダンジョンに住むことになって10年が過ぎた。


生き別れになっていた、母も1ヶ月後にこのダンジョンに移り住む事が出来た。


(なにもかもジュモー様のおかげだ)


イブンは、ジュモーの住まう屋敷の方を向き感謝の念を捧げた。


残念ながら父は死んでいたが、母を見つけられただけイブンは幸運な方だろう。


最初に保護された14人のうち、近縁者が見つかったのは、イブンも含めて4人のみだった。


ただ、半月ほどのうちに、前のダンジョンで救出された人間は増えて、村自体は100人程の規模になった。


今のイブンの嫁も最後に救助された女性だった。慣れない新しい土地で、先輩として世話を焼いたのがイブンの母だったので、それが縁で所帯を持ったのだ。


今では子供も3人いて、賑やかな家庭になった。


「ばーちゃん、ご飯なにー!」

「なにー」


真ん中の男の子と末の女の子が、叫びながら家に入ってきた。


後から長女と嫁が野菜の入ったカゴを持って、帰ってくる。


「野菜のシチューだよ」


母が答えると食べ盛りの2人が口を尖らせる。


「えー!ニクはー?」

「ニクー!」


「今日俺が作った腸詰肉を少し入れてあるよ」


俺がそういうと、2人は両手を上げて飛び回った。


「やった〜!」

「やった〜」


(幸せだ)


イブンは、幸福を噛みしめる。

前のダンジョンでは、あんなことになる前でも、こんな幸福を感じることがなかった。


ここには豊かな土地と気のいい仲間、愛する家族がいる。

ダンジョンの常で、たまに魔物は発生するが、瘴気の発生に気を付けているので、あまり強力なものは出ない。


(それもこれも、ジュモー様とピエール様のご指導あっての事)


最初の1年程は、ジュモーもピエールも常に村を見回っていろいろアドバイスをしてきたが、最近はずっと屋敷にこもっている。


姿を見せるのは、年四回行う祭のときくらいだ。

それでも村人たちの尊崇は変わらない。


(最初に自動人形(オートマタ)とおっしゃったときは、意味がわからなかったけどな)


ジュモーもピエールも10年が過ぎても姿が全く変わっていない。

イブンにしても、他の村人にしても自動人形(オートマタ)に対する理解は、不老不死の存在といった程度だろう。


それで別に困りはしない。彼らが何者であろうと、村の保護者であることは変わりがないのだから。


「ダンジョンマスターとジュモー様に感謝を」


イブンたちは声を揃えて食前の感謝を込めて捧げると、賑やかに夕食を食べ始めた。




「今の第2層の状況は、ご覧の通りです」


ジュモーがうやうやしく頭を下げた。


「平和そうでなにより」


おお、なんか俺、偉そうだな。


「今の人口は?」


シャルが尋ねた。


「132人です」


「十年で21人増かー。ちょっと物足りない?」


「まあこんなもんじゃないかな。旧ダンジョンが、もう少し落ち着いたら、移住者も増やせるだろうし」


「祭りが使えることがわかっただけで、大成果」


ノマの言葉に頷く。


「こんなに瘴気の発生が抑えられるとは、思わなかったよ」


「旧ダンジョンでもやりたいけどねー」


言外で難しそうだと指摘する、シャルの言葉に苦笑する。


「こっちはジュモーの権威があるから、みんなにやらせるのは簡単だったけどな」


「そこは旧ダンジョンでは、デレク先生の権威で」


「よせよ」


いなしてジュモーとピエールに向き直る。


「これからも2層の管理をよろしく頼む」

「は!」


永遠を生きる人形たちは、永遠を支配するマスターに頭を下げた。

読んでいただき、どうもありがとうございます。


前の回はどうも、予約投稿をミスってたみたいです。

台風のせいもあり気がつくのが遅れました。どうもすみません。


台風通過地域のみなさんは、いかがお過ごしでしょう。あまり被害がない事をお祈り申し上げます。

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