117 救出その2
長い黒髪に端正な顔立ち。
折れないか不安になるような細い手足の小柄な女性だ。
背は130糎ほどで子供のようだが、全体の雰囲気は大人の女性を思わせる。
アンバランスで不思議な雰囲気の女性だった。
「わたしは、ジュモー。いろいろ聞きたい事もあろうが、全員が目覚めてからにしよう。それまでは、隣の部屋でくつろいでいるが良い」
それだけ言い置くと、ジュモーは音もなく部屋を出ていった。
言われた通りに隣の部屋へ行くと、そこは明るい食堂のような部屋だった。
そこにジュモーとよく似た雰囲気の少年がいた。
「わたしはピエールと申します。こちらに軽食と飲み物を用意してございます。みなさんがお揃いになるまで、自由にお取りください」
言われて見るとテーブルの上に様々な食べ物がのっている。
軽食とは言うが、イブンの知らない食べ物ばかりだ。
恐る恐る口にしてみたが、腹も空いていたせいもあり、すぐに貪るような食べ方になる。
最初の一口こそ美味しいと思ったが、その後は身体の欲するままに食い、味は良く分からなくなっていた。
イブン自身は知らないが、先程までは死の寸前までいっていた身体を、魔法で無理矢理全快させたのだ。
身体中の細胞という細胞が、栄養を欲していた。
気がつくと、いつのまにか周囲でも目を覚まし者たちが夢中になって食事をしている。
もっとも年長で40台。若い者で12、3歳といったところか。男女は、やや女性が多い。
「全員起きたようなので、そのままで良いから話を聞いてくれ」
ジュモーが現れ、良く通る声で話し始めた。
横にはピエールが控えている。
「私はジュモー。尊き我が主人ダンジョンマスターから、この階層の管理を任された者じゃ」
そして、何気なく調子で付け加えた。
「わたしも、ここにいるピエールも人間ではない。自動人形じゃ」
読んでいただき、どうもありがとうございます。
非常に短めになってしまいました。申し訳ございません。
気候の変わり目で体調不良になってしまいました。
本来、丈夫なのが取り柄なんですが…。
台風や雷で大変なところもあると思いますので、皆様も体調管理に充分ご注意ください。