表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンは世界だ!  作者: トト
119/134

116 救出その1

「ひどいもんだな」


俺の目の前に広がる風景。

それは死体の山だった。

全て3層の領民だ。


普通、人間に限らず死骸は3日でダンジョンに吸収される。

死骸を食ったり、素材を取ったリするのは、その間に行う。


死骸から切り離した肉や素材は、ダンジョンに吸収される事はない。一体どうやって吸収される物とされない物を区別しているのかは、ダンジョンマスターになった今でも、良くわからない。


食肉なんて、吸収される死骸より大きいのに、ちゃんと残るもんなぁ。


目の前の悲惨な光景に、心が追いつかなかったせいもあり、下らない事を考えていた。


無造作に投げ捨てられている死体は、老若男女合わせて100体ほどだろうか。


つまり、この3日間以内で最低100人の領民が殺されている、という事だ。


しかも、この死体はここで殺されたものではない。

この近くに村や町はないし、大きな道も通っていない。


ここに死体が集められたのは、3層では少なくなった手付かずの森が広がっているからだろう。

ここでダンジョンに吸収させ、瘴気を増やしたいのだろう。


「瘴気が濃ければ、魔物が発生しやすそうな土地です」


ココアが珍しく、吐き捨てるように言った。


「あいつら、本気で3層を狩場にしようとしてるんだな」


多分、俺も同じような口調だろう。


「あ!」


ココアが素っ頓狂な声を上げた。


「どうした?」


「まだ息のある人がいます!」


「なに?」


慌ててココアがいう方向に向かう。


冷たい死体の中に、確かにまだ微かに温もりのある身体がある。


若い男だ。


急いで治療魔法をかける。


「マイダンジョンで治療しましょう。あっちなら、死んでなければ全快させられます」


あっちだとダンジョンマスターの権能が使えるからな。


「いっそのこと、この人たちを全てマイダンジョンに入れるか」


うん。それがいい。

さすがに死者は生き返らせないが、マイダンジョンでなら完全に力素として吸収できる。


このまま埋葬もされず、瘴気と化すよりはまだマシだろう。


生きている人間の、勝手な言い草かもしれないが、


感傷を振り払い、死体をマイダンジョンに送り込む。

驚いた事に、まだ微かに息のある人が14人ほどいた。


マイダンジョンで、治療を行い全快させる。身体欠損などもあり、力素を大量消費した。

その消費量が、他の死体を吸収した事によって得た力素と、ほぼ同量だった事に感傷的になってしまう。


死者が生者を生かそうとしているような。




「一体ここは?」


イブンが目を覚ましたのは、見知らぬ建物の中だった。


簡素なベッドが並べられ、人が横たわっている。

彼自身も、その中の一つで寝ていたようだ。


「そうだ!父さんと母さんは?」


意識を失う前の事を思い出す。

生まれ育った土地を捨て、5層へ逃げ出す途中だった。2層兵に襲われる荷を奪われて、腹を刺されたはずだった。


思わず腹を押さえるが、特に痛みは感じられない。


ベッドに寝ている者を確認したが、両親はもとより、知った顔はいないようだ。


「一体、ここは?」


先程と同じ問いが口をつく。


「気がついたようじゃな」


背後から、可愛らしい声がかかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ