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ダンジョンは世界だ!  作者: トト
118/134

115 逃亡その5

最初に反撃に気付いたのは、誰だったのか。


「気をつけろ!背後が泥地になっている!」


小山を取り囲む騎兵たちの背後で、彼らをさらに包囲するように泥沼が広がっていた。


深さはわからないが、重装備の騎兵を乗せた馬が入り込めば、足を取られて転倒するのは避けられないだろう。


試しに手にした槍を突っ込んでみた兵がいたが、泥の深さは30糎以上ありそうだった。


奇妙なことに泥沼は徐々に広がっていっている。

小山の方に。


騎兵たちは、強制的に小山に向かって追いやられているのだ。


「クソ!奴の魔法か?!」


そう叫んで十騎長が振り向くか、女性ノマは、すでに小山の中に戻ってしまっていて姿がない。


泥沼は、どんどん広がり、すでに小山までの距離は20米ほどだ。


この〈軟泥〉は、コゴローンたちの仕業だ。騎兵たちに見つからないように、周囲を転がりながらかけているのだ。


突如、小山の側壁が開いた。


近くにいて、それを目撃した騎兵が、好機とばかりに槍を構えて突撃した。


側壁に開いた穴から、あるものが出てきて、すぐに閉まる。


出てきたのはゴーレムだった。


まずいと思う間もない。

ゴーレムが右腕を振ると、拳大の石が飛んできた。

騎兵の右肘を砕く。


騎手が落馬しても、馬は命じられた通りゴーレムに突っ込んで行く。


その馬をゴーレムが、ガシリと受け止めた。

真っ向ぶつかったように見えたが、ゴーレムはその硬い身体でどうやってか、衝撃を逃したらしい。

人の体格の5割増しの大きさで、全身が岩でできたゴーレムはもちろん、馬もケガはないようだ。


馬が、いななきもせず大人しくなった。


ゴーレムは、妙に人間くさい動作で馬の首筋を叩くと次の目標に向かった。


それは、死の鬼ごっこであった。


鬼は、もちろんゴーレム。

騎兵たちは、反撃もままならず逃げ惑う。


しかもフィールドは、徐々に狭まっていく。


フィールド外に逃げようとしても、泥にはまって動けなくなったところを、岩弾で打ち抜かれる。


仕舞いには、馬を巡らす場所さえなくなり(かち)で逃げる羽目になった。


無駄な努力ではあったが。


実際には死者が出ていない事に気付いたのは、ゴーレムに一塊りに集められた時だった。


すでに泥沼は固められ、小山も綺麗になくなっている。


小山の内部に避難していた領民たちは、少し離れた場所で、敵意に満ちた視線を兵たちに送っている。


「馬と武装は全ていただいていく」


ノマが、倒れ伏した兵たちに宣言した。


そう。ゴーレムは馬を傷つけないように注意して戦い、それに成功していた。

そして、ノマが命じたのは、それだけではない。


「あなたたちの命を取るつもりも、捕虜にするつもりもない」


更なる言葉に兵たちに、安堵が広がった。

次の瞬間に、絶望に突き落とされるのだが。


「あなたたちは、手足のいずれかが使えなくなっているが、本隊に暖かく迎えられる事を祈っている」


「そ、そんな」


呻いたのは、十騎長だったか。


「それでは」


ノマも領民たちも、二度と振り返る事はなかった。

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