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ダンジョンは世界だ!  作者: トト
114/134

111 逃亡その1

しばらくの間、胸クソ要素+ざまぁの繰り返しになります。

ご注意下さい。

ノマは、足を早めた。


前方を飛ぶ鳥のシモベが、襲われている領民たちを見つけたのだ。


ここは、3層の西側。

だいぶダンジョンの壁に寄った辺りだ。


3層では、壁は巨大な山脈として表現されている。

その山脈がだいぶ迫って見える。


ノマは、靴にも魔力を巡らし強化を行いながら、ひた走る。


靴に気を使うようになったのは、シャルの情報提供のおかげだ。


それはともかくとして、ノマは全速力で走っている。


10人程の領民が、20人以上の2層兵に追われているのだ。


特にノマを焦らせるのは、その後方。

上空から眺める鳥の鋭い目に捉えられた、村の惨状だった。


領民たちが通過したと思われる村には、死体と2層兵が見える。


どう見ても、虐殺が行われたのだ。


鳥の見つけた領民たちは、その虐殺から逃れたのだろう。


だが、細い田舎道を荷車を引きながら逃げているので、兵に追いつかれるのも時間の問題だ。


領民たちまで、2層兵は数十米。ノマは数粁。

必死の競走だ。




2層兵の伍長ベイクは、不思議な高揚感に囚われていた。


2層の比較的裕福な商家の四男として生まれ、成人しても家も継げず新たな商売を起こす気にもなれず、くすぶる事数年。次男の紹介で入った領軍は、居心地が良かった。


たまに出る魔物相手の討伐こそ命がけだったが、他の任務は領民を相手に威張りちらしていれば、良かったのだから。


2層の全ての人にとって不幸な事に、ベイクに限らず2層兵には、兵は民を保護する為にいる、という意識が全くなかった。


まだ貴族の方が、民の生活が自分の収入に直結する為、保護意識があったくらいだ。


まして、縁も所縁もない3層の民に対しては情けのあろう筈がない。


なので。

ベイクは、不思議な高揚感に包まれていた。


今まで、人を殺したことはなかったが、今回3層の民を手にかけ全く忌避感がなかった。


それどころか、今逃げる3層民を追うことに、心が躍っている。


「隊長!あいつら、殺して構わないんでしょう?」


逃げる領民を追う2隊のうち、直属の隊長に確認した。

彼が先任であるため、この集団全体の指揮官でもある。


「構わん。ただ荷車の荷物は汚すなよ。大事な糧食だからな」


先任の隊長は、笑顔で言い放つ。


「男ばっかりだから、気にせず殺せるな」

「ガキだが、女が2、3人いたぜ」

「ガキじゃぁなあ」


人としての箍が外れ、欲望を剥き出しにした兵たちが笑い合う。


「そろそろ、矢で狙えないか?」

「ふざけんな。息が切れて狙えねぇよ」

「足止めにゃなるだろ」


それもそうかと、一人が立ち止まり、荒い息のまま、弓を引き絞った。


「がぁっ!」


悲鳴をあげたのは、弓を構えていた男だ。


上空から襲ってきた鳥の爪で、左手首を攻撃されたのだ。


「報告にあった鳥か!」


先任隊長が叫ぶ。


「周辺を警戒しろ!3層兵がいるぞ!」


オーミー男爵領でのシャルが、報告されていたのだろう。


2層兵は足を緩め、周囲に注意を向ける。


その間に逃げる領民は、距離を稼ぐ。

必死に足を動かす領民たちの目に、途轍もない勢いで走ってくる人影が映った。


「な、なんだありゃ」


思わず足を止めてしまう領民たち。

人影は、一瞬で彼らの前に達し、立ち止まった。


「助けにきた」


小柄な女性は、猛速度で走ってきたとは思えぬ涼しい顔で、そう言った。


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