1 ボーイ ミーツ ボール
お気楽な小説を書きなぐっていこうと思っています。
ご贔屓に願えれば幸いです。
あまり書くのは早くないので、最初の5話程度を毎日投稿、以下は週3回くらいの更新でいく予定です。
草むらに隠れている俺に、コボルドが一匹近付いて来る。
集団で動くコボルドが、単独行動をするのは、限られたケースしかない。
追放されたか、斥候か。
いずれにしても、魔物は機会をとらえて、殺すべきだ。特にコボルドのような、繁殖力の高い種類は。
幸いコボルドは、風下に向かって歩いており、俺の匂いに気付く可能性は低い。黙って待っていればいいという、奇襲にはこの上もない状況だ。
ギリギリまで引きつけて、手にした短槍でコボルドの足を払った。
「ギャ」
短い息を飲むような悲鳴を上げて、コボルドが転倒する。そこに駆け寄り、喉元に小剣を落とす。
コボルドは、すぐに動かなくなった。
コボルドの生命力の一部が、経験値となり俺に吸収されたはずだ。
神殿で祈らないと、確認できないが。
俺はコボルドが死んでも、しばらくそこで腰を落として、周囲を伺った。
どうやら、周囲に他の個体はいないらしい。
ホッと一息ついて、倒したコボルドに視線を向けると、不思議な光景が見えた。
コボルドの額に、小指の先ほどの球体が現れ、そのまま脇に転がり落ちたのだ。
滑らかな半透明の球体で、七色に反射している。
「なんだ、これ」
思わず摘み上げて、手のひらで転がしてみる。
「命石じゃないしな」
その時だった。
球体は、溶けるように形を崩し、俺の手のひらに吸収されてしまった。
「1日に2度主人を変えるなんて」
頭の中に、そんな可愛らしい声が響いた。