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須佐妖戦帖 第3章 「妖狐の傀儡」  作者: 蚰蜒(ゲジゲジ)
9/10

其の9 木藤

九尾が中に浮いた。

「軍隊共、わたしの炎で解けるが善い」

「まずい!砲炎を吐く気だ!」

佐助と武角が、特大の燃える手裏剣を数枚同時にお見舞いした。

九尾の首と顔に刺さった。

「ぐわああああーーーー」

顔が上を向き、砲炎は天に向かって放たれた。

「九尾、もう一度やってみろ。またお見舞いするぞ」


「あ!あれは?」

木藤が其処に立っていた。

「殺されるぞ!佐助、彼を守れ!」

「はい!」

佐助が木藤の前に立ちはだかった。

九尾が睨んだ。

「貴様~!神社の小僧だな!」


木藤は脇から神鏡を取出した。


「木藤刑事!」

「須佐さんよ。此れだろ?」

「そうです。よく持っててくれました」

「処で、彼処に居る忍者と大和民族のガキは何だい?」

「須佐の族長と須佐之男さまです」

「あの時代錯誤の格好のガキが須佐之男?何で須佐之男がガキなんだ?」

「そんなことより鏡を」


其の時、木藤に向かって九尾が砲炎を吐いた。

ぐわあああああーーーー!

佐助は木藤を後ろに、刀で身を挺した。

砲炎は2つに別れて列した。

「す、凄い熱だ・・・」

「数千度はある炎です。人間など骨も残らない」

「佐助さん、倒せるか?」

「・・・・傷つけるのが精一杯です」

「こんなものが、古代に暴れたわけか・・・人間など、ひとたまりもないな」

「一国が崩壊するわけです。木藤刑事、そうなる前に此処から奴を出してはいけない!本領を発揮仕出す」

「あんな化け物・・・」

「木藤刑事、鏡だけでは駄目なんです」

「知ってるさ」

2人は頷いた。


「九尾!あの時、お前は慌てたな。親父からどうしてか?聞いた」

「なんだと?!」

木藤は鏡を前にかざし、九尾に向かって祈禱きとうを始めた。


呪文らしき事を呟いている。

九尾は顔が強張り、動けなくなった。


すると鏡から小さな竜巻と雷雲が立ち籠めた。

「小僧ーーーーー!!」

狐が苦しみ出したのである。

「何だ?何が起きている?」須佐之男達は唖然とした。

其の竜巻と雷雲が九尾に向かって行った。そして九尾を取り巻いた。

「うあがあああああああ!!」

身体に付いていた顔達が次次に吹き飛ばされた。

ひゅーーーーん、しゅぱーーーん!


「む、無念!!!!ぐわあああああーーーーーー」

どどどどどどどーーーーーー!

素志て九尾が鏡の中に吸い込まれて行った。


静寂が戻った。

「木藤刑事、あなた・・・・」

「親父に九尾を封じ込める祈禱を子供の頃、教え込まれたんだ。玄翁げんのう和尚が作った九尾狐封じ込めの祈禱だ。とは云う物の信用はしていなかったよ」

「凄い・・・・」

「鏡から殺生石に転移される。元居た所に封じ込められるそうだ」


「木藤刑事?僕は須佐之男。彼は須佐族長・武角。ありがとう」

「古事記に云う、健速須佐之男命たけはやすさのおのみこと?あなたは八咫烏やたがらす武角身命たけつのみのみこと?」

「そうだよ」

「本人だというのか?」

「そうだよ」

「まてよ。其処までとなると、さすがに信じられない。まあ、信じたとしよう、武角さんは豪気そうでわかる。しかし、何故?須佐之男が子供なんだ?」

武角と須佐之男は、顔を見合わせ困っていた。


「須佐之男殿!」

「やあ、阿倍の陰陽師。我らは無事だが多くの犠牲者が出た」

「外もです。木藤刑事、陰陽師も真っ青ですよ」

皆、外に出た。

「須佐之男!」

「先生、無事だったね」


「木藤さん」

「木藤・・・」

「警部、合田、署の皆も僅かだが生き残ったか」

「木藤、何が起こった?大狐や餓鬼は・・・?」

「封じたからもう出ません」

「封じた??????」

「警部、此の2人は健速須佐之男命、須佐族長・武角身命」

「健速須佐之男命、須佐族長・武角身命?」

「信じられますか?」

「信じる・・・・2人とも光り輝いている。尊いお人たちだと云うのがわかる」

皆、彼らにひれ伏した。

「佐助殿」

「将軍。消防を呼んでくれたまえ」

「消防が来るなら我らは引き上げよう」と須佐之男が武角に云った。


「けど、直ぐにすることがあるんだ」

「すること?」

「殺された人達を生き返らせる」

「須佐之男、そんなこと、出来るのか?」柳田が驚嘆して聞いた。

「大昔からやってるよ。限界はあるけど、魂が其処らに漂っていれば出来る。狐は魂を喰ってると云ったろ?封じ込めで奴は人間の魂を置いて行った。つまり、此処には魂が沢山あるんだ」


須佐之男が大きく上に手を広げた。すると其処に小さな沼の一部が表れた。

「此処は父上が顔を洗った場所だ」

「父上?伊邪那岐命いざなぎのみことか?」

「うん、此処は再生、生み、不死の場と呼ばれる」

「古事記の説話だな。其れは何処だ?」

「教えられない。此処の水を人間の全身に浸すと不老不死になる」

「ええ!!」

「先生、此の水は須佐部落にもあるんです」武角が答えた。

「須佐のあなた方が長寿な意味がわかった気がする」

「少々の水なら傷を癒したり、多少の水なら死人を再生させることが出来る」

「つまり?」

「狐に殺された人達を人間に戻せる」


「なんと!しかし、肉体は消滅してるぞ」

「魂があれば生前の記憶から再生出来る。外に二体、餓鬼がいるだろ?」

「ああ」

「あれは火下夫妻だよ」

「火下夫妻?!」

「あの侭ではあまりに不憫だ。だから二人には気を失う程度の雷を当てた。さあ、此の水を汲んで掛けてあげてください」

火下夫妻だと云う餓鬼に掌から其の水を掛けた。すると。みるみると元気な人間になった。

「凄い・・・信じられない・・・・」

「此処は?此処は何処?」

「もう大丈夫。あなた方は元に戻りました」

「・・・でもあの人達はもう元の場所には住めないだろう」


バラバラにされた署員たちも再生された。

「問題は九尾の中に居た人達だ」

「須佐之男、数千年前の人々を生き返らせても・・・」

首だけの者達は表情が晴れやかだ。

「須佐之男様、貴方は荒神などではない。高貴な神でした」首たちが須佐之男を讃えた。

「中国や印度の人達も僕を知ってるの?」

「知っていますとも。あなたは阿修羅あしゅら羅睺らごうとも習合されています」

「云いにくいんだけど・・・・」

「わたしたちは解っています。穏やかな天に昇った方が善い」

「わかりました」

謝謝しぇしぇ

「署長・・・・」

「須佐之男殿、やりましたね。木藤、ありがとう。市民を守れた。わたしも天に昇りたい」

木藤や合田、忌部、署員たちが敬礼をした。


そして須佐之男が草薙剣を大きく廻した。

其の上に天に向かって光の渦が出来た。

すると首たちは其の渦の中に巻き込まれて天に飛翔した。

「天の光が視得る。光だ・・・安らぐ・・・」

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