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須佐妖戦帖 第3章 「妖狐の傀儡」  作者: 蚰蜒(ゲジゲジ)
2/10

其の2 容疑者 柳田

「おい!首の無い死体を抱えてるぞ!」

「きゃーーーー!血!血!」アパートの住民が騒ぎ始めた。


木藤は応援を呼んだ。合田が呼びに行った。

大家が駆けつけ大騒ぎだ。

木藤は自分の上着を死体にかけた。

「な、何事ですか?!」

「ご心配無く。私は警視庁の者です」

「刑事さんですか!其の死体、205号室の佐藤さんじゃないか?殺人ですか?柳田さん!あ、あんた何をしたんだ?!」

「わたしじゃない!」柳田は泣きながら訴えた。

うーーーーうーーーー。

「パトカーです。うちの署の者達が来ます」

1人の住民が訴えた。「刑事さん、直ぐ其処でも殺人事件があったそうじゃないか?来るのは其の捜査中だった連中だろう?此れも関連の殺人かい?此の柳田さんが殺したのか?」

「わたしじゃない!」


警官隊が到着すると口々に云った。

「木藤刑事、何があったんです?!」

「俺にもわからん。兎に角、アパートの住民達を部屋に戻してくれ」


「皆さん、後はわたしたちに任せて」警官たちが静止に入った。

「アパートを血まみれにされて、黙っていられるか!」

「気持ちはわかりますが、どうか後は」


「木藤さん」

「おう、合田」

「何かわかりましたか?」

「此の柳田?殺ったのか?よく視ろ、この遺体の首を」

「何も残っていない・・・粉々にすっ飛んでますね」

「そうだ。どうするとこんなことが出来る?至近距離から散弾銃でも撃ったか?」

「音もしないし、銃も無い・・・・」

「凶器は何だ?俺は音は聞いたが銃ではなかった」

「何の音を聞いたんですか?」

「どーんって音だ。まるで地面が陥没でもしたか?と思うような音だ」

「そ、そんな音が我々に聞こえなかったと云うのですか?」

「其れも不可解だ。で、此処に来たら此れだ」

「どういうことですか?」

「・・・・わからん」


「此の男を署にしょっぴけ」柳田は両手を掴まれ、パトカーに乗せられた。

「木藤ちゃん、何事だい?こっちでも殺しかい?」車で遣って来た鑑識の佐々木だ。

「佐々木さん、視てください。首から上を持ってかれてます」

「・・・・同じだ・・・」

「さっきの女の屍体と?」

「うん、焦げていない。がれた後が綺麗だ。刀で斬ったのならわかるが、明らかに何かの砲弾のような物でふっ飛ばされている。何か痕跡は?」

「まだ、わかりませんが、おそらく・・・何も出ないでしょ」

「・・・・兎に角、此の屍体を片しましょう。纏めて細かく後で視ましょう」

「お願いします。付近の住民まで集まって来ましたよ」

「合田、住民達は家の中に居るように・・・と警官達に伝えてくれ。で、今夜は此処等周辺の視回りもだ」

「解りました」

「奴(柳田)は・・・此の事件二つに噛んでいるかもしれない。署で徹底的に訊問だ」


表は重要参考人である。が、誰もが彼を疑っていた。

署では木藤のボスである捜査一課・忌部いみべ警部が待っていた。

「木藤、合田、ご苦労さん、しかし、どういうことだ?」

「ええ、正直さっぱり解りません」

「其の男をどう思う?」

「わかりません。身元を洗いましょう」

「屯でも無い悪党かもしれんぞ」

「身分証明証は預かってます」

「大学の先生か。兎に角、奴から事情を聞け」

「はい!」


柳田は訊問部屋でおびえていた。

「此のままでは私が犯人にされてしまう・・・」

戸が開いて「待たせたな」木藤と合田が部屋に入って来た。

「今夜はもう遅い。そう、問い詰めはしないよ。まあ、楽にしろ。先ず、君の素性だ。少し調べさせてもらった。阿鼻あび大学の考古学講師だってな。名を柳田国緒。間違い無いか?」

「はい」

「大学に電話したら、学長の長谷川さんが出た。心配していたよ。直ぐに署に来ると云ったが夜も遅いので明日にして貰った。長谷川学長から君の話を聞いた。優秀なんだってな」

「刑事さん、あなたは私があの男を殺したと思っていますか?」

「どういうトリックを使った?是非、教えてくれ」合田は柳田に優越感を与えようとした。

「トリック?違う!私は襲われたんだ。其れを聞きつけて隣の佐藤さんが来て・・・彼が・・・巻き添えを喰った・・・」

「借家住民の聞き込みがある。君たちの間には私怨など何も無い筈だと云っていたよ」

「当たり前です。善い人でした」

「そうか、なら、人殺しの性癖を持ってるのか?」

「違う!だから、女が殺したんです」

「其の女は何処に行った?」

「逃げました」

合田が口を挟んだ。「木藤さん、逃げたのなら玄関しかない。我々が着いたのは事件の直ぐ後です。我々が其の姿を視た筈です」

「善し!じゃあ、其の出鱈目話を聞いてやろうじゃないか。其の女の特徴を云えるか?合田、原さんは居たかな?」

「居ました。呼んで来ますか?」

「頼む」原とは高齢の人相書きの名人と呼ばれる人である。


原が楚々(そそ)くさと遣って来た。「原さん、急に申し訳ない。一画、お願いしたいんです」

「気にするなよ。木藤ちゃん。何時でも善いよ」

「柳田、此の人にお前を襲ったと云う女の特徴を云え」

柳田は女の特徴、格好などを粒さに述べた。原はこうか?と数度見合わせた。

「木藤ちゃん、出来たよ」

「木藤さん!」合田が叫んだ。「此れは破裂死した女性と瓜二つです!」

「柳田!警察を虚仮こけにするのか?!此の女は襲ったんじゃなく、お前が殺した女じゃないのか!」

「私は嘘など云っていない!」

木藤は合田の耳元に「こいつ、襤褸ぼろを出すぞ・・・どうせ嘘っ八だ」合田は頷いた。


「何故?私が殺人犯になる?殺された女?何がどうなってる?刑事さん、殺された女性ってなんですか?」

「ほう、今度は御とぼけか?教えてやろう。合田」

「柳田さん、あなたの住宅の近所で女性の惨殺死体が見付かったんです。其の捜査中だった。此の木藤刑事があなたの住宅の方から大音を聞き、一緒に飛んで行ったんです。すると、其の有様・・・」


「女性の惨殺死体?」

「ええ、素志てあなたがを襲ったと云う女の人相書きが瓜二つ」

「そ、そんな馬鹿な・・・・」

「そうだ。そんな馬鹿げたことがあるか」木藤がちゃちゃを入れた。

「偶偶、似てるだけでしょう。あなた方は現場で写真を撮り、わたしのは人相書き・・・差が・・・」

バン!木藤が席から立ち上がり怒りをあらわにした。


「おい!柳田、我々が何故?同じ女だと思ったと思う?」

「?」

「お前を襲った女の特徴は何だ?」

「両頬のホクロ」

「殺された女性にも同じところにホクロがあるんだ」

「ええ!」

「そんな偶然ってあるか?」

「え?え?で、でも同じ女性だとしても、わたしは其の女性が殺された後に其の女性に襲われたんですか?」

「馬鹿云うな!何処までとぼける気だ。何かトリックがある筈だ。どうやった?大学の先生だもんな。頭善いものな」


「わたしは関係無い!・・・・あ!」

「何が、あ・・・だ?」

柳田は黙り込んで心の中で呟いた。

「手から金の毛が生えた・・・餓鬼を出し、四つん這いになって・・・・あれは・・・妖狐だ。那須野から来たと云い、名は玉藻・・・。まさか・・・まさか、伝説の封印された金毛九尾狐?・・・何故?何故、わたしを襲った?」

「何をブツブツ云ってる。柳田。お前さんは前の惨殺事件の時のアリバイはあるか?」

柳田はさらに心の中で呟いた。

「アリバイなど無い。1人で部屋に居たから・・・もしかして、此れは仕組まれた事か?わたしをハメたのか?何故?」

「柳田、きさま容疑が晴れるまで家には帰れないぞ」

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