3.ネットオークションでRMT
まず小山さんの口から飛び出したのは、ネットオークションの思い出だった。
RMTとは業者のサイトだけではなく、ネットオークションでもやり取りがあるのは知っていたが、どのようなものなのだろうか。
2016年の1月頃に小山さんはネットオークションでRMTをしたことがあるという。
小山さんは『今はネットオークションを勧める気にはなれませんが』と断りを入れたうえで、こう切り出した。
「オークションを使ったRMTにはもともと興味があったんです。
ダイスを使ったゴールド受け渡し方法とか良さそうだなと思っていましたが、チート騒動の余波でダイスも取引額制限かかり、監視も厳しくなっているそうなので一旦あきらめました。
オークションでのRMTの検索方法ですか?『ドラクエ10 ゴールド』とでも打ち込めば沢山出てきますよ。かなり危険な出品者も多いですが。」
※チート騒動:2015年の11月に起こったドラクエ10界の大事件。
チートツールを使用することで簡単に職人で大成功品を作ることが出来る(た)という事実が判明し、アストルティアへ未曾有の衝撃を与えた。
発覚する原因となった少年はチートを使用して数十億ゴールド以上を生み出したとされる。稼いだゴールドをダイス行為に浪費したことでプレイヤーの更なる反発を招き、ダイス行為への妨害行為が相次いだため、運営もダイスへの対策として1回のゴールド取引額に制限を設けた。
運営は警察に相談としたというが、いまだに不明な点が多く、騒動から半年以上たった現在も全貌は明らかにされていない。
「危険な出品というのは、個人販売を装った業者ですね。
オークションRMTの長所に個人販売というものがあるんです。
これは業者でも何でもないごく普通のプレイヤーがゴールドを販売しているんですね。
優良な個人販売の場合は、職人などで稼いだ【綺麗なゴールド】を渡してくれるので運営から目を付けられる確率が業者よりもグッと下がるんです。
デメリットとしては個人ゆえにゴールド生産がそれほど多くないことと、レートがかなり割高なことですね。
しかし業者が個人を装うことが頻繁に行われているので見極めが大事です。
なかなかいい出品者だなと思ってその人の出品履歴をチェックすると、現在進行形で5億ゴールドくらい出品している人とかよく居ます。過去の取引額が数十億ゴールドとか、個人が簡単に用意できる金額じゃないですし、思いっきり業者ですよね。
ネットオークションにあまり詳しくないんですが、【国産】、【個人生産】、【迅速取り引き】などの単語を強調している出品者は怪しいですね。
業者よりももっと嫌な出品者もいるのでオークションは嫌いですね。」
奥の深いネットオークションを使ったRMT取り引き。
しかし個人出品者を装う業者よりも嫌な出品者とは何なのだろうか。
「大っきらいなのは転売ヤーですね。
個人でゴールドの転売をしている連中です。
ネットオークションのRMT相場って、業者の相場よりも結構高めなんです。
プレイヤーの中には、ゴールド欲しいけどRMTサイトでの購入方法がわからないという人もいるんだと思うんですね。そんな人たちは取り引きに手数料のかかるネットオークションを使うので、高めのレートになっているんでしょう。
そこに目を付けたのが個人の転売ヤーです。
転売ヤーはRMTのレートが低い時に業者からゴールドを購入して、それをネットオークションで職安全な個人生産だと偽って売りさばくのです。
例えば1万円で業者から1000万Gを仕入れ、オークションでその1000万Gを1万3千円とか1万5千円で売ると儲けが出ますよね。そうやって転売ヤーは小銭を稼ぐんです。
日本人だから日本語は出来るし、個人出品者だと信用する利用者は多いんじゃないでしょうか。
もちろんそこでやり取りされるのは業者産の【汚いゴールド】です。
それに、リアルマネーの取り引き方法によっては自分の個人情報が他人に知られるリスクもあるわけです。
高いレートの金を払って危険度の高いゴールドを手にする取り引き。
これが僕のネットオークションを勧めない理由です。」
こう語る小山さんであったが、一度だけオークションを利用したことがあるそうだ。
「たった一度ですが、ネットオークション使った事があるんです。
その時は最新装備の究明者セットが欲しくてたまらなかったんですね。
そこでオークションを見ていると、『究明者セットに好きな錬金効果を付けてお渡しします!』みたいな出品があったんですよ。もう勢いで落札しちゃいましたよね(笑)
落札額ですか?たしか1万5千円くらいだったかな。」
ゲーム内の装備1セットに1万5千円と簡単に言うが、
しまむらやユニクロならば2セット買ってもお釣りがくる金額である。
「落札後のやりとりの中で僕がほしい究明者の錬金効果を指定してお金を振り込みました。
相手が入金確認後、僕のサブキャラの家のたんすに装備を届けてくれました。
入金した翌日に届けてくれたので、めっちゃ早く錬金してくれたんだなと感動しましたね。
でも装備の詳細みて驚きましたよ、生産者・錬金者が全部バラバラ(笑)
自分で錬金して効果を付けますなんて大ウソで、バザーで買ったものを届けただけでした。
僕は結局割高な装備を買っただけ。
あれも一種の転売ヤーだったのかと思うと腹が立ちますね。以来ネットオークションは利用していません。」
まだ解凍されきっていない〆さばを強引にかじると、小山さんははき捨てるように言った。