1.半年ぶりの再会
※こちらを読まれるには
前作の「ドラクエ10のRMTで70万使った男」をご覧ください。
(http://ncode.syosetu.com/n5521dg/)
その続編となっています。
2016年6月下旬。
都内某駅近くの歩道で、私はしばらく佇んでいた。
そろそろ夕方というこの時間は交通量も多く、人と車が引きも切らずに行きかっている。
ピークは過ぎたとはいえ、少し汗ばむような陽気だ。
正直なところ私は目の前の階段を降りて冷房が効いているであろう居酒屋に入りたかった。
しかし、本日の取材対象者である小山さんが
『入店せずにお店の前で待っていてください。』
とメールをくれたため、こうしてボーっと立っているわけだ。
私はガードレールに寄りかかるようにして、歩いてやってくるであろう小山さんを待った。
そして待ち合わせ時刻から5分ほど経った頃、入店したくて恨めしそうに居酒屋の入口を覗いている私は後ろからの「こんにちは。」という声にギョッとした。
私の後ろは車道のはずである。あわてて振り返ると、ロードバイクに乗った小山さんがそこに居た。
彼はサングラスを外しながら遅れてしまった非礼を詫びたが、私はそれよりも小山さんが乗っていた自転車にクギ付けとなっていた。
彼がまたがっていたのはデ・ローザというイタリアメーカー車で、ロードバイクの世界では高級ブランドである。廉価モデルでも1台30万はくだらない。
高かったでしょう?と聞くと、50万位です。と答えが返ってきた。
小山さんは50万円の高級自転車に簡単なカギをかけて店の前に置くと、さあ入りましょうと私を促した。
「ずいぶん簡易的なカギですね。あれだと簡単に盗まれちゃいそうですよ。」
都内は自転車の盗難が非常に多い、芸能人が自転車盗難被害に遭ったというニュースを見たことがあるだろう。生半可なロックでは盗難されてしまう恐れが十分にある。
私のそんな心配に対して小山さんは階段を下りつつこう言った。
「50万円の自転車が盗まれても大したことはないですよ。
最近まで100万円以上使ったゲームから永久BANされたのですから。」
ドラクエ10のRMTで110万使った男~小山翔平~
そうだった。この人はドラクエ10のRMTに100万円以上のお金をつぎ込み、先日永久アカウント停止の処分を受けたばかりだ。
そしてこのやり取りがしたいがために外で待ち合わせをしたのだろう。
小山さんらしいというか、なんというか。
私と小山さんは笑いながら居酒屋の暖簾をくぐり、腰を落ち着けた。
今日は永久アカウント停止の顛末をじっくり聞かせてもらおう。